2017年10月27日金曜日

某月某日 勝った日


ある日、仕事上の厄介事がとても良い方向に決着したので、ホッとする。ホッとしたせいで何だかどっと疲れて真っすぐ帰宅。

不思議なもので家に着くと妙に元気になる。お気に入りの備前の徳利と唐津のぐい呑みで晩酌しようかと考える。でも、ロクなツマミが無い。

で、近場のウナギ屋にでも行って祝い酒と洒落込もうと計画変更。いそいそと出かける。

ふと気付く。ダイエットに励んでいたはずだ。ウナギは厳しい。シメの鰻重をご飯抜きで食べるのは拷問である。

またまた計画変更。結局、小石川方面に向かうはずだったタクシーに「やっぱり銀座まで」と伝える。

せっかく真っすぐ帰宅したのにアノ街が私を呼んでいる。

ダイエットに最適なのは馴染みのお寿司屋さんである。食べる量に関してワガママが言える。

たどり着いたのは8丁目の「S」。運が良いのか悪いのか、珍しくガラガラである。大将とバカ話をしながら夜が始まる。

刺身も珍味もちょこっとずつ出してもらう。煮ダコ、イクラ、白子あたりをまるで沖縄の豆腐ようを爪楊枝で食べるかのようにチビチビ食べる。

天然ウナギがあったので、極小サイズの白焼きにしてもらう。日本酒が飲みたかったが、カロリーを考えて焼酎一本勝負でグビグビ。

訪ねたのが中途半端な時間だったので、いつのまにか客は私一人になってしまった。アーだのコーだの言いながら調子よく飲む。

「チビチビ食い」といえども酒の力は有難い。酩酊するうちに空腹感はなくなる。握りを食べないヤボな客になってしまったが、一見客ではないから許してもらう。

この店の大将とは何年か前に二人きりでカラオケボックスで熱唱し合ったこともある。その時の話で盛り上がったついでに、「歌でも歌いに行くか」という悪魔の誘い?を繰り出す。

大将は店の若い衆に段取りを指示してから合流するとのことで、一足先にクラブというかスナックというか、妖怪屋敷のような店に久しぶりに足を運ぶ。

ここもまた客が一組しかいない。寿司大将との歌合戦にはもってこいである。


ちょっとしてから大将が合流。差し入れとして豪勢な巻きものを持参してきた。イクラやウニがぶりぶりだ。ダイエッターである私をイジメているとしか思えない所業だ。我慢して妖怪の皆さんに食べてもらう。

で、二人でドシドシ歌う。「中島美嘉」から「西城秀樹」「テレサテン」まで何でもアリである。大将は40代半ば、声が太いし歌唱力も高レベルである。「EXILE」なんかも歌っちゃう。

オジサマバンドのボーカリストとしては負けてはいられない。私にしては珍しくガンガン熱唱した。「ハマショー」はもちろん、「プリプリ」から「ゆず」、「福山雅治」から「太田裕美」までランダムに歌う。

この店のママさんはイケメン大将がお気に召したようで、我々の席に着いたまま時に自分も歌い出す。これがまたかなりのレベルでボーカリストである私は自らの修行の足りなさを痛感する。

で、結局、誰かが歌う中島みゆきの「糸」に心を揺さぶられながら、ふと時計を見たら何と午前3時である。

時計の針を見た途端に「疲れたから真っすぐ帰宅したはずの自分」を思い出す。ちょっと混乱する。

「糸」を聴きながら揺れていたのは、純粋な心ではなかった。おそらく酔いと眠さで視界がふらついただけである。

その後、「シメの1曲」が2曲になり3曲になり、脳ミソがほぼ活動停止状態になる。

そして、ふと気付けば猛烈な空腹である。大将とママさんと「シメの食事」を食べに行くかどうか話したような記憶があるが、心を鬼にして帰ることにする。

3時半頃の銀座はタクシーの乗車制限もなくどこもかしこも空車だらけ。実に素晴らしい光景だ。夜遊びを真面目に頑張った人へのご褒美みたいなものだ。千鳥足で乗り込む。

帰路、タクシーの中で猛烈な空腹と闘いながら、ふと家の近くで新聞配達を始めた自転車が目に入る。

私が目にしている光景は夜じゃなくて朝だと気付く。私の中の悪魔が囁く。

「朝ご飯なら食べちゃってもいいんじゃない?」。

私の中で悪魔と天使がせめぎ合う。有難いことに天使が派遣してくれた睡魔と疲労という強力な助っ人のおかげで、何も食べずに水だけガンガン飲んで寝た。

その後、ヘロヘロになって起きた後に計った体重は前日より2キロ近く減っていた。

完全勝利である。

2 件のコメント:

ポテ珍3号 さんのコメント...

 (*'∇')/゚・:*【祝】*:・゚\('∇'*) 

圧倒的勝利おめでとうございます。
カラオケ熱唱が良かったかと。

富豪記者 さんのコメント...

ポテ珍3号さま

有難うございます!
実は完敗の日も多く、なかなか連戦連勝とはいかない日々です。。