2017年5月19日金曜日

私のカツ丼物語


ドンブリは若者専用。そんな根拠のない思い込みのせいで損をしている。ドカ盛りのドンブリ飯をかっ込みたいのに、つい我慢することが多い。

酔っていれば深夜に牛丼の特盛りを平らげるくせにシラフだとナゼか丼モノから一歩引いてスカした顔をしている。

基本的に昼飯を食べないことも原因かもしれない。昼のドンブリならともかく、夜のドンブリが問題である。

夜はじっくり腰を落ち着けて食事をしたい。そんな思いが強いからドンブリの出る幕がない。


馴染みの焼鳥屋に行っても、その店で1番ウマいのが親子丼だと知っているのに、ついついレバーやナンコツの串焼き、ササミキムチあたりで焼酎をあおっている。

先日もあてもなく新橋を歩きながら豚丼のウマい店の前を通ったのに、夕飯が10分程度で終わっちゃうのは寂しいという理由でパス。その後、どうでもいい小料理屋に入って激しく後悔した。


天ぷら屋さんに行ってもホントは天丼を食べたいのに、分かったような顔をしてお好み天ぷらである。おまけに塩で食べさせられてイライラする。

こんなことで素直になれない自分がバカみたいである。いやバカだ。

カツ丼。その響きを聞いただけでヨダレが出ちゃうスーパースター的ドンブリだが、なかなか食べる機会が無い。

蕎麦屋に入ったら気取って蕎麦をたぐらないとヤボだと思っているし、トンカツ屋に行っても上等なヒレカツをじっくりと味わうことがオトナの嗜みだと思い込んでいるから、カツ丼をガツガツ食べるチャンスがない。


大衆酒場ではちょくちょく「カツ煮」を頼む。カツ丼のご飯抜きである。素直にカツ丼にしてもらえばいのに、それだと負けた気がする。これまた御苦労な思い込みである。

毎日でもカツ丼を頬張りたい。誰に向かって遠慮したり気取っているのかサッパリ分からないが、そんな簡単なことが実行できない。

おまけにカツ丼を食べない言い訳として「トンカツはソースに限る」と強硬に主張することもある。もちろん、筋金入りのソースマンとしてトンカツを塩で食べるのは絶対にイヤだ。でも、カツ丼のあの「卵とじ&蕎麦つゆ味」は別ものである。

ソースマンとして一部地域の定番であるソースカツ丼も幾度となく食べてきているが、やはり東京人にとっての正統派カツ丼といえば、卵とじのアイツである。

で、先日、日頃の欲求不満に耐えかねてカツ丼を食べることを目的に夜のトンカツ屋に出かけた。

場所は銀座の「梅林」である。隣の席では白人の観光客がトンカツ定食を前に喜色満面である。

そこへ私の注文したカツ丼がやってきた。「黒豚スペシャルカツ丼」2500円である。富豪を目指す私としては、この店に4段階用意されているカツ丼の中でも最上級の1品を注文した。


卵とじに加えて半熟卵トロ~リである。隣の白人が羨望の眼差しを送ってくる。いや、気のせいかもしれない。でも、心の中で「キミ達ビギナーにはまだ早いよ」とつぶやきながらムホムホと食べる。

幸せだった。

でも、別の日に銀座6丁目の「とん喜」で食べた凄くウマかったカツ丼の3倍もの値段を払うのはビミョーではある。

結論としては、チョット高いぐらいのカツ丼がベストだろう。そのぐらいだと、手頃なカツ丼よりは店の頑張りやこだわりを感じるし、なによりも、オトナのドンブリっぽいイメージになる。

結局、意味不明な見栄が邪魔して私の「カツ丼愛」はねじ曲がっている感じである。

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