2017年4月28日金曜日

アブラギッシュ


いつの頃からか牛肉が苦手になってしまった。今でも赤身の牛肉はウマいと思うが、それなりの店に行くと「霜降りこそ正義だ!」みたいな風潮が漂っているのでゲンナリする。

若い頃は脂身が大好きなアブラギッシュ野郎だったのだが、今では一切れで充分である。劣化であり老化だが仕方がない。

子供の頃は家ですき焼きをやる時には割下を入れる前に鍋に塗りたくなる真っ白な牛脂の塊までかじっていた。白い脂は友達だった。


焼肉屋さんで上等な盛り合わせを頼んだら画像のような皿がやってくる。私の感想は「白い」の一言である。

同行者がバクバク食べる姿が宇宙人のように見える。結局、チャンジャや牛すじ煮込み、韓国海苔あたりで酒を飲んで肉を一枚も食べないのに支払いはコッチ持ちという事態になる。

20代の頃、主食がカルビだったことを思うと複雑な気分だ。タンならサッパリだろうと期待してもオススメの上モノを頼むと白いヤツが出てきて困る。


仕事の会食で王道の一つがしゃぶしゃぶ屋である。そんな席に呼ばれる際には前もって胃薬は欠かせない。接待の場だからウンチクつきの霜降り肉が仰々しく登場する。

私も一応紳士だから「おっ、これはこれは凄い肉ですね~」などと言ったりするが、嫌いなはずの野菜ばかり食べる。

だからこっちが招待するときは絶対に牛肉メインの店には行かない。それこそが「おもてなし」だと個人的に思う。

プライベートの場合、とくに女性からしゃぶしゃぶやすき焼きを希望されると仕方なくニコヤカにエスコートする。こういう時に困るのがメニューの選び方だ。

インチキ富豪の見栄のせいで上等な肉を注文してしまう。下心がある相手ならともかく、下心完了済みの相手だろうと同じだ。

本当は赤身肉なら食べたいのに、赤身肉は価格が安く、メニューの下の方にしょんぼりと記載されている。

それを頼むと金欠キューキューオヤジだと思われてしまいそうで、ついつい無駄に高い方を注文してしまう。

なんともバカげた見栄である。でも、それが男の歩む道である。

よく脂身の多い肉について、「ワサビで食べるといい」「野菜を前もって食べると胸焼けしにくい」などという風評を聞く。そこまでしないとダメなら食べないのが一番だと思う。

「脂が乗った」と「脂っぽい」は別モノだ。今どきは肉だけでなく魚に関しても闇雲にギトギトした“脂感”をウリにしたものを見かける。

最近よく目にする「トロサーモン」や「トロ鯖」とやらも一体何なんだろう。ただただビチャビチャしてそうでちょっと恐い。

まあ、エラそうに脂っぽいものが苦手だと書いている割にはちっとも痩せない。結局は脂の乗ったウナギとか豚肉とか、なんだかんだとアブラギッシュなモノを摂取しているからだろう。

脂っぽい肉を毛嫌いしている私だが、私自身の身体は安いカルビみたいに脂身だらけである。

残念ながら共食いがイヤだから脂身から逃げているだけなのかもしれない。

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