2016年11月14日月曜日

上海ガニと毒


「上海ガニにダイオキシン」。ニュースで見た人も多いだろう。中国から香港に輸出された上海ガニに基準値を遙かに超えるダイオキシンが検出されたという話だ。

輸入、販売停止措置が取られたことで、香港では秋冬の風物詩ともいえる上海ガニが見当たらないそうだ。

なんとも残念な話。

一応、日本に入ってきている上海ガニとは別ルートのようで、あくまで現状では“対岸の火事”のような状況である。

でも、そんなニュースを聞くと気分は良くない。日本でも今シーズンは一気に消費量が減ることが予想される。

というわけで、上海ガニを食べに出かけた。相変わらずウマかった。秋が深まると食べたくなる。この日は銀座の維新號新館でムホムホ食べた。


老酒に漬け込んだ酔っ払いガニの他、蒸したカニをホジホジしてきた。独特のコクや旨味は他のカニとは別な種類の美味しさだ。

有害物質を正しく心配することは大事だが、過剰反応してもキリがない。毎日毎日大量に食べるならともかく、たまにちょろっと食べるぐらいで大げさに騒いだって仕方がない。

ちょっと尿酸値が上がったぐらいでビールを飲まなくなる神経質な感じに似ている。

私の場合、気ままな中年独り者である。育ち盛りの子供が食べるわけではない。中年男という生き物は日頃からワケの分からない有害物質を摂取しているから、さまざまな毒性に特殊な抵抗力を持っている(ウソです)。

「食」をめぐる騒動の特徴は過剰反応の一言に尽きるだろう。15年ほど前の狂牛病騒動(BSE騒動)の凄さなどはまさに異常なレベルだった。

一過性だったとはいえ、多くの人が一気に牛肉を食べなくなり、牛丼業界などは経営環境がそれこそ瀕死の状況になった。

痙攣して倒れる牛のニュース映像が繰り返し流され「牛肉イコール危険」という単純なイメージがあっと言う間に世の中に広まった。

結果的にBSE感染患者は国内では一人も出なかったし、今では何事もなかったように輸入牛肉がスーパーに並んでいる。

もちろん、大したことにならなかったのは結果論であり、正しく怖がったから無事だったという解釈も成り立つ。

とはいえ、牛肉を毛嫌いすることが、まるでルービックキューブやインベーダーゲームのように「ブーム」なっていたのも事実だ。大衆心理が引き起こす『熱病』のパワーを象徴する一件だったと思う。

上海ガニの場合、老若男女を問わず頻繁に食べるものではない。牛丼のような国民食だったら隣の国の騒動が一気に飛び火するはずだが、続報が出ない限り、上海ガニ騒動は知らぬ間に沈静化するはずだ。

誰だって有害物質なんて口に入れたくない。でも今の世の中そうもいかない。一般人には良し悪しなど判断できない添加物だらけの食べ物で溢れかえっている。

レトルト食品、カップ麺はもちろん、鮮度が良さそうな手作り感満載の惣菜や弁当だってチンプンカンプンな添加物の名前がキッチリ表示されている。

心配したくても何を心配していいか分からない。一方でこれまで何十年もいろいろ食べてきた上で元気に生きているわけだからヘッチャラだという開き直りもある。

加工食品が怪しいからといって、生鮮食品なら安全かとも言い切れない。放射性物質は原発事故以来、1日も休むことなく海に垂れ流されている。

アンコウのような底生生物には確実に害が及びそうなものだが、冬になればアンキモをウホウホ言いながら食べる。

底生生物のキモ、すなわち肝臓は見方によっては毒の塊みたいなものだが、ウマいからついつい食べる。

アンキモに限らず、シャコや海老あたりの甲殻類も海の中では結構ヤバいもの(人の死体とか)を食べちゃってるし、鮮度が良いからと言って衛生的に問題がないわけではない。

実際にシャコの刺身にあたって死んじゃった人もいる。極論すれば体質や体調次第で毒になってしまうものはいくらでもあるわけだ。

そういえば、私自身、何年か前に上海ガニに当たったことがある。吐きまくったりして結構キツかった。

食べた店は上海ガニファンなら誰も知っている有名店だった。一緒に食べた同行者は何でもなかったから、おそらくモノ自体に問題があったというより単にその日の私の体調が良くなかったのだと思う。

体質的にサバのアレルギーなど無い私だが、疲れているとシメサバでも当たっちゃうことがある。

なんだかよく分からない話になってきたが、クセやアクがあるような“強め”の食べ物は体調と相談しながら食べた方が安心だろう。

そんなことより、上海ガニを熱めにお燗した紹興酒と一緒に味わうとブヒブヒ鼻を鳴らすほどウマい。

あの喜び、あの幸せを堪能するために、ダイオキシン騒動のニュースは今シーズンが終わるまで見ないことにする。

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