2015年12月25日金曜日

越路吹雪の凄さ


今年の紅白のトリはマッチと聖子ちゃんだそうだ。正直言って意味不明である。NHKも目玉が無い紅白を盛り上げようと苦心したようだが、なんだかパっとしない。

紅白を今年限りで「卒業」する森進一に彼のヒット曲をメドレーで歌わせたほうがよっぽど見応えがありそうだ。

まあ、いいや。

今日は昭和の歌について書いてみたい。マッチも聖子ちゃんもそれなりに人気があったが、昭和歌謡というジャンルは彼らより少し前の世代までが一般的だと思う。

沢田研二やピンクレディーぐらいまでじゃなかろうか。昭和30年代半ばぐらいの石原裕次郎や美空ひばりあたりから五木ひろし、都はるみといった演歌勢、布施明、尾崎紀世彦、ちあきなおみなどの歌唱力系、西城秀樹、山口百恵などのアイドル元祖系が第一線で活躍した時代が昭和歌謡の中心的な時代だろう。

ヒット曲といえば、子どもから年寄りまでみんなが知っていた。今の時代は100万枚のセールスといっても全世代が共通して知っている歌は存在しない。

今の時代にも名曲はいくらでもあるのだろうが、全世代みんなが口ずさめたという点では昭和歌謡のインパクトは独特だ。

昭和歌謡の大スターは裕次郎、ひばりを筆頭にいろいろな人の名前が挙がるが、少し特異なポジションにあるのが「越路吹雪」である。


昭和歌謡というジャンルを超越した傑物である。シャンソンの女王と呼ばれていたが、そんな括り方では済まないエンターテイナーだ。ジャズもこなすし、言ってみればジャンル自体が『越路吹雪』である。

「愛の賛歌」「サントワマミー」「ろくでなし」などの代表曲は元々フランスの曲だが、“翻訳したカバー曲”というイメージではない。越路吹雪自身のオリジナル曲かと思えるほど独自の世界を作り上げている。

たとえば、この曲の表現力の凄さには圧倒される。大袈裟に言えば、誰にも似ていない、誰にも真似できない、まさに孤高の存在だと思う。


https://www.youtube.com/watch?v=2cPKNwaHuUU

私がまだ幼い頃、母親がしょっちゅう聴いていたのが越路吹雪だった。子供心には「ド派手で恐そうなオバサン」という印象しかなかったが、大人になるに連れその凄さを痛感するようになった。

昭和40年代、高度成長期で少し余裕の出てきた日本人に「オシャレな欧州の気分」を体現して見せた人だったのだろう。

不世出の傑物のわりには裕次郎やひばりに比べて後世の扱われ方は少し地味に過ぎる。きっと彼女の放つ空気が独特だったせいだ。

すべての大衆を引きつけるオーラというより、良い意味でのスノッブな雰囲気が漂っていたから、熱狂する人とそうでない人の温度差が大きかったのかもしれない。

ウィキペディアの受け売りだが、過去に何度も出場していたNHK紅白への復帰要請に対して「ジーンズ姿の歌手と並んで出るのはイヤ」という理由で断り続けたという。

あの時代の大スターの矜持みたいなエピソードだと思う。悪くない話だ。

当時、スターといえば親近感をウリにするのではなく、文字通り星のように手が届かない存在だった。だからこそ今と違ってスターという言葉が一般的だったわけだ。

次に貼り付けたのは「愛の賛歌」である。まさに圧倒的だ。こんな表現力豊かな歌い手は人間国宝級だろう。

https://www.youtube.com/watch?v=qaUIQ3t7mPo

私自身、この歌が大好きである。カラオケ宴会の際にはウケ狙い?でよく選曲して身振り手振りを交えて熱唱する。

「愛の賛歌」は、今をときめく?シンガーソングライターの斉藤和義がライブなどでカバーして熱唱することでも知られる。

50歳近辺の彼の年齢からすると私と同じように子ども時代に「ド派手で恐そうなオバサン」のこの歌に圧倒されたのだろう。

そういえば、今は亡き忌野清志郎も「サントワマミー」をロック風にアレンジしていた。激しいロックバージョンになっているのに、気のせいか越路吹雪のパワーには及ばなかったように感じる。

カバーされればされるほど、本家の凄さが際立つ。そういう意味では、越路吹雪の名曲が現代のミュージシャンによってどんどんカバーされて欲しい。

コンサートやライブではなく、あくまでリサイタルという言葉が似合った傑物・越路吹雪。彼女の熱唱を手軽に見られるYouTubeの存在がつくづく有難い。

平和な年の瀬である。

2 件のコメント:

道草人生 さんのコメント...

富豪記者殿
小生も同じような経験があります。あまり歌手のことに興味を見せない母から越路吹雪がなくなった時にレコードを買ってくることを頼まれました。昭和30年代に若き日々があった世代には別格の存在だったのでしょうね。自分は世代的に全く被らないのでおっしゃる通り存命の頃は「厚化粧の怖いおばさん」でしたが30過ぎてから彼女の素晴らしさがわかるようになりました。本当に不世出の大スターですね。

富豪記者 さんのコメント...

道草人生サマ

そんな経験がおありでしたか。
あまり世間一般に知らていなくても名曲がいっぱいありますよね。
昭和の偉人の一人だと思います。