2015年11月27日金曜日

銀座 鮨わたなべ


飲食店の新規開拓はどことなく旅に似ている。なんとなく興味を持って、勝手に想像して、実際に行ってみて、楽しかったり、失敗だったり・・・。二度と行きたくない店もあれば、何度も行きたくなる店もある。

今日は、最近初めて入ってみたお寿司屋さんの話。短期間に何度もリピートしたから私にとっては良い“旅先”だったのだろう。


銀座5丁目、並木通りと中央通りの間にあるビルの3階に構える「鮨わたなべ」。入口までのアプローチがウマいものへの期待を膨らませてくれる。

店内はモダン過ぎたり、無機質過ぎることもなく、適度なドッシリ感があって大人がくつろげる雰囲気だ。カウンターの奥行き、椅子の間隔ともに余裕があって心地良い。

店主が若造ではない点がとくに良い。なんか変な言い方だ・・・。でも飲食店の場合、「こだわりがありそうなオッサン」がカウンターの向こう側でデンと構えていてくれると妙な安心感がある。

この店の大将は、キッチリした寿司職人の雰囲気がプンプン漂っている。いい感じに年を重ねた風貌で、弟子の立場だったらきっと恐そうである。そういう感じが良い。

かといって無愛想というわけではなく、しっかりそれぞれの客に目を配り、余裕のある応対をしている。

若い店主の店で時々感じる気負った感じ、力んじゃった感じはない。だから居心地が良いのだと思う。

肝心の食べ物は極めて正統派だ。ツマミにしても握りにしても、奇をてらったものではなく、オーソドックスなものが中心。ただ、それぞれの産地や質に相当なこだわりがあるようだ。

カツオ、アジ、タコ。こう書くとごく普通のラインナップだが、目ん玉丸くして驚いたり、変なうなり声を出すぐらい美味しかった。凄いことだと思う。

ツマミも酒盗や塩辛、筋子、なめろうなど酒飲みが素直に喜ぶものをサラっと出してくれる。他にも香箱ガニは湯葉と和えて出したり、一夜干しの焼き物も出てきたり、短期間に続けて行ったのだが飽きちゃうことはなかった。

真っ当なお寿司屋さん。単純な言い方だがそれが一番的確かもしれない。ポツポツと無駄話を交わしていると大将のこだわりが随所に垣間見えて楽しい。

なんでもかんでも塩で食べさせようというヘンテコな風潮にブツクサ言う私にも激しく同意してくれた。でも、調子に乗った私がユズやダイダイ系も寿司屋には不要だと熱弁をふるったのに、大将は九州の出身で子供の頃からのユズ・ラバーだった。ちょっとシュンとする。

ネットの口コミによると、こちらの大将は江戸前仕事をウリにする名店の出身だそうで、実際に“仕事系”のネタがとても美味しい。

とくに印象的なのがアナゴや煮ハマグリなどに塗るツメだ。この店のツメはネタそのものと付かず離れずの絶妙な味わい。ツメ自体が突出するような感じがなかった。

コハダはもちろん、白身魚の昆布締めやヅケマグロの味の加減も強すぎず弱すぎず、いいあんばいだ。全体にもっと強い味を予想していたが、良い意味でさりげない風味だと感じた。バランスが良いのだろう。

イマドキのお寿司屋さんの中には、修行僧みたいな大将の気むずかしい空気がウリ?だったり、変にモダンで無理やりワインと寿司を組み合わせようとしたり、先日、このブログでも書いたような「おまかせ絶対主義」だったりと、「何だかなあ~」と言いたくなる店も少なくない。

それにくらべて、こちらの店は「ごく真っ当なお寿司屋さん」だと思う。「上質な普通」と言いたくなる。普通を上質に昇華させることは並大抵の技量では無理だと思う。

オシャレとかスノビッシュとか、本来はお寿司屋さんの世界に不必要な要素をしっかり排除している感じもかえってカッコイイ。

値段についても場所を考えれば真っ当だろう。平気で勘違いしたような値付けをする店が多いあの街では良心的なほうかもしれない。

アレコレと書いていたらまた行きたくなってしまった。

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