2015年8月7日金曜日

銀座 夜の部活


相も変わらず夜の「部活」を続けている。クラブ活動である。もちろん踊るクラブではない。オジサマがガハハハと喜ぶ酒場のほうだ。


なんだか“習性”のようになっているが、最近はふとした瞬間に以前とは違うモヤモヤした感覚にとらわれる。「慣れ」の弊害だろう。

「慣れ」などと書くと毎日のように通っているヒマ人だと思われそうだが、そういうことではない。一種の加齢問題である。

若い頃に感じた「アウェーな感じ」が薄らいだことがモヤモヤの理由だ。年齢による図々しさのせいだろう。アウェーな感じが心地良い私としては少し淋しい。

若い時は背伸びしている感覚があった。ロマンスグレーの渋いオジサマばかりが集う店で場違いな感じを味わうのが堪らなかった。居心地の悪さを逆に楽しんでいた。Mっぽい喜びとでも言おうか。

平均的な客層より年齢が下だったから、そんな感覚を楽しめたのだが、今ではすっかり「標準的な年齢層」である。アウェーな空気も感じなくなってしまった。

ここ2~3年、中学高校時代の同級生と銀座のクラブで偶然遭遇することも増えた。そんな年齢であることをイヤでも実感させられて複雑な気持ちになる。

部活に足を突っ込んだのは大学生の頃。好きこのんで足を踏み入れたのではない。一回り以上年上のクラブ活動が大好きだった知人に頻繁に同行させられたのがルーツだ。

30年ぐらい前の話である。当時は六本木ばかり。こっちは成人するかしないかの頃だから女友達はいっぱいいた。だから若い女子目当てのオジサン的行動が理解できずにいた。

そうはいっても元来アマノジャクな部分があったから、バブル直前の浮かれた若者遊びとは異質の「クラブ活動」が面白かった。オジサンのように励んでいる自分のヘンテコな日常を結構楽しんでいた。

朝までアフターが当り前の元気な時代だった。ホステスさんだけでなく、黒服さんやバンドマン達と親しくなって、朝まで不健全に遊んで、しょっちゅうゲロ太郎になっていた。

若造だからカッコつけてばかりだった。こっそりトイレに行って吐きまくって、素知らぬ顔で遊びの輪に戻ることもあった。おかげで「据え膳」は何度も逃した。つくづくアホだった。

社会人になり、師匠格の年上の知人と同行することは減ったが、当時のつながりがあったから、ふらふらと六本木で飲む機会は続いた。

「部活の独り立ち」である。「常連さんが連れてくる学生さん」という立場を失ったことで想像以上に環境激変。いろいろと勉強になった。

「お客様」になった途端、ちっともモテなくなった。「お客様の連れのウブな学生さん」だからツマミ食いもしてもらえたのだろう。

お金を払ってなかった時のほうがモテたという事実から世の中の不条理、理不尽を学んだ。

銀座デビュー?は20代の終わり頃だった。六本木で顔馴染みだったオネエサンが銀座に移るとのことで、興味本位で覗きにいったのが6丁目数寄屋通りの「M」だった。

当時の銀座は、今とは違って若い客が見当たらなかった。圧倒的な「オトナっぽい濃い空間」にたじろいだ。

でも、かなわない感じ、場違いな感じが新鮮で、店のはじっこで小さくなって飲んでいるのが妙に面白かった。


あのワクワクした気分を感じることはさすがになくなってしまった。今では席に座るなり、太田胃散くれ~、梅昆布茶くれ~などと天下無敵なオッサン的言動を繰り返している。

ウブな頃の自分から見たら「態度のでかいガサツな客」である。20代、30代の頃は他のお客さんの居ずまいなんかを何気なく観察していた。カッコイイ中高年を目指そうと勉強する意欲があったのだろう。

そんな姿勢もいまはカケラもない。周りを気にせず酔っ払っているだけだ。

通算すれば30年も夜の部活に関わったことになる。少しは何かを学んだのだろうか。何かの肥やしになったのだろうか。

一応、あの世界は男の学校みたいな要素もあるから、今現在の私の振る舞いや物腰に少なからず影響を与えたのかもしれない。

でもビミョーである。あの世界を知らずにいれば確実に私の預貯金残高は結構な金額になっていたはずである。

まあ、禁煙したってタバコ代が余裕資金にならないのと一緒で、あの世界を知らなければ違う分野で散財しただけだろう。


時々、80歳を超えたような長老みたいなお客さんを見かける。自分がそんな年になってそんな行動をしたいとは思わないが、元気さを測るバロメーターとしては夜の街は大いに意味があると思う。

銀座のクラブに来る人々は、エネルギッシュで精力的である。負のオーラを漂わせているような人はまず見かけない。街自体のパワーがドンヨリした人を弾き返している気がする。

何歳になっても「現役感」を維持することは大事だ。そういう意味では10年、20年経ってもあの街で太田胃散片手にワイワイ騒いでいられたら幸せなんだろう。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

男性はいいですね。お金があれば、一人の時間、美しい女性との時間、、その時の自分に合った時間を過ごすことができるんですね。そんな生活をしている男性のほんの興味本位で関わってしまった女性は彼の生活を理解するのにせつない気持ちになります。

富豪記者 さんのコメント...

コメントありがとうございます。
あの世界はあくまで酒場というカテゴリーですし、一種のバーチャルみたいなものですから。。。