2015年8月5日水曜日

贅沢とジャンク


「贅沢は敵だ」。戦時中のスローガンである。その後、昭和元禄を経てバブルのさなかに言われていたのが「贅沢は素敵だ」というキャッチフレーズである。

昭和世代の中でも、高度成長期の恩恵に漬かってバブル前夜に青春時代を過ごした私にとって、贅沢はやはり素敵である。

出費がかさんでピーピーしている割には質素倹約を目指すわけでもない。宵越しの銭は持たねえぜなどとヤケッパチのようにつぶやいている。


贅沢にもいろいろある。一度にレトルトカレーを2種類味わうことは贅沢だし、糖質制限を理由にデリバリーのピザの生地を全て残して具だけを食べるのも贅沢である。

冷やし中華の麺を2玉茹でたのに、1.5玉分だけ食べて残りは捨てちゃうなんてことも贅沢極まりない。

とはいえ、食べ過ぎて肥満度合いが強まり、成人病になって医療費がかさんで国家に迷惑をかけることを思えば間違った行動ではないのかもしれない。

くだらない屁理屈はこのあたりにする。

最近、贅沢だなあと思ったのが北京ダック専門店で出された「キャビアダック」である。

銀座にある北京ダック専門店で顔馴染みの店長がサービスしてくれた。焼き上がったダックを皮で包まずにキャビアを載っけただけで頬張れと言う。


頬張ってみた。キャビアである。酒好きにとってマズいわけがない。でも、ダックとともに食べる意味がよく分からない。味のコンビネーションが合うわけでもない。

要は「贅沢感を食べるシロモノ」である。そう考えればフムフムである。味がどうだの食感がどうなのと四の五の言うものではない。

「贅沢なものをサービスした」という事実と「贅沢なものをサービスされた」という事実だけが重要なんだろう。

よく分からない言い方だが、ある意味、その部分こそが贅沢の本質なのかもしれない。気分の問題である。

さてさて、贅沢品だからウマい、大衆品だからウマくないという理屈は成り立たない。ドメスティック男である私としては、キャビアよりスジコやイクラのほうが好きだし、トリュフの味わいも今ひとつピンとこない。

要は、自分にとって嬉しいかどうかが大事であり、嬉しいものであれば、安くたって贅沢品になり得る。


画像に写っている変な色のドリンクはバイスサワーである。高いものではない。でも流通量が多くないから知る人ぞ知る存在。いわば貴重品、ついでにいえばなかなか飲めないという点で贅沢品である。

東京・下町の工場で作られているローカル飲料である。梅と酢をもじって「バイス」と名付けられたもので、梅シソ風味がウリである。焼酎と炭酸で割って出来上がりだ。

ふらっと訪ねた巣鴨の大衆酒場で遭遇した。黒ホッピーが飲みたかったのに用意されておらず、落胆したのも束の間、バイスサワーを発見。さすが巣鴨!である。

怪しげな色のバイスサワーとともに写っているのはイカメンチである。絶品だった。イカの風味がしっかりあって食感も絶妙。ソースとの相性も抜群で、今年食べたものの中でもトップ10に入るぐらいウマかった。

もっと他のツマミも食べまくろうと思ったのだが、私の醬油小皿の上を巨大なチャバネゴキブリがのっしのっしと歩いていたので、そそくさと会計を済ませて店を出てしまった。

チャバネといえば1センチ程度の小物しか見たことがないが、この日出会ったのは体長5~6センチはある大物。おまけにコソコソ動き回るわけでなく、威風堂々と周囲を威圧するように歩いていたので、さすがの私も血の気が引いた。

ある意味、贅沢な体験だったのかもしれない・・・。

書いているだけで茶色く光るアイツを思い出して冷や汗が出てきた。飲食店にゴキ様は付きものだと分かっているのだが、改めて外食中心の自分の食生活を考え直そうかと思った。

キャビアの話から、どうしてチャバネの話に辿りついてしまったのだろう。

今日は贅沢モノとジャンクモノを考察しようと思ったのに、大幅に脱線してしまった。

暑さのせいだと思う。

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