2015年1月9日金曜日

てびち&ソーキ


豚足(とんそく)は謎めいた存在である。批判を覚悟で書くが、ハッキリ言ってゲテモノである。世代的、地域的な要素もあるが、私自身、若い頃は当然のように敬遠していた。

「トンソク大好き~!」とか「トンソク食べに行こうぜ!」とか嬉しそうにハシャいでいる人を見たことはない。

どこかウラぶれた雰囲気というか日陰者みたいな位置付けである。まかり間違っても西麻布のオシャレなバーで菜々緒みたいな女子がかぶりついている可能性はない。

あくまでマイナーな存在である。

少なくとも、ちょっとした割烹や日本料理屋で出てくることはない。私自身、若い頃に台湾料理店で遭遇してギョっとしたことを覚えている。


そんな残念?な存在の豚足だが、沖縄に行くとまるで様子が変わってくる。エラそうにゲテモノ扱いしていた私も毎日毎日、豚足太郎になっている。

泡盛のつまみに豚足、沖縄そばのトッピングに豚足・・・。1日に何度も食べることも珍しくない。東京では食べる機会がないのに沖縄では中毒状態になる。

沖縄での呼び名はご存じ「てびち」である。「手引き」が変化したとか「食べたい」が変化したとか、語源には諸説あるらしい。不思議なもので「トンソク」という響きより「てびち」のほうが俄然食欲が湧いてくる。


沖縄のてびちは、煮物にしたり、それを沖縄そばに載せたり、塩焼きにしたり、唐揚げにしたりと、縦横無尽の活躍である。

東京人にとって驚くのがおでんの具にもてびちが登場することだ。私自身、その昔、那覇の怪しげなおでん屋でてびちのおでんに遭遇してオッタマげた。食べてみたらウマくてビックラこいた。

今回の旅でも、アチコチでてびちを味わったが、かつてないほど美味しい唐揚げに出会った。本島中部の美浜にある「きんぱぎんぱ」(金波銀波)という店の一品が最高だった。



下処理がよほど丁寧なのだろう。臭味などひとかけらも無く、衣のまとわせ加減、揚げ加減ともに完璧。付け合わせの塩を一振りして食べるも良し、ポン酢ベースのつけだれで食べるも良し、泡盛古酒をグビグビしながらアッという間にペロペロ食べた。

豚足をウマいのマズいのと語るのもどうかと思ったが、たかが豚足されど豚足である。「てびち」と名が付いた段階で単なる豚足ではなくなる。沖縄料理のスター!である「てびち様」になる。

豚の繋がりでいえば、「ソーキ」も不思議なヤツだ。豚の骨付あばら肉である。豚肉カースト?においては決して上位ではない存在だ。

これも割烹や日本料理店でお目にかかることはない。豚の角煮はあっても骨付あばら肉はどこかマイナーである。

そんなイジらしいソーキだが、個人的には高級日本料理店で出てくる角煮よりも数段ウマいと思っている。てびちも好きだがソーキのほうがもっと好きである。


ソーキといえば沖縄そばがポピュラーだが、地元の食堂に行けばソーキ汁も人気だ。単なるソーキ煮付けも泡盛のツマミに最高である。そばにトッピングするだけではもったいない。

今回の旅でもソーキそばを連日ワシワシ食べた。スマホで撮った画像をチェックしたら、たかだか3泊4日でソーキそばを5回も食べていたことが判明した。我ながら異常な偏食ぶりである。

その中でもっともインパクトがあったのが、那覇の外れで見つけた「やんばる食堂」という店のソーキそば定食である。

この店に行った日は、ホテルの無料朝食をパスして朝昼兼用で「沖縄っぽいものをガッツリ食べる」ことを目的にクルマでさまよっていた。

なんちゃら食堂と名乗っている沖縄の店は、たいていボリュームたっぷりで空腹太郎が狂喜乱舞する世界である。

その手の店を探してあてもなく車を走らせながらカーナビの画面に表示されたのが「やんばる食堂」である。

http://okinawa-shokudou.com/yanbaru/pc/

イメージ通りの店を発見して勝手に興奮する。昼にはまだ早い時間なのに結構混雑している。昼にはまだ早い時間なのに赤ら顔でホロ酔いのオッサンもいる。なんとも素敵な空間である。

やたらと豊富なメニューを前にしばし悩む。結局、無難にソーキそば定食を注文した。

無難な注文のハズだったのに、さすがは沖縄の食堂である。ソーキがゴッソリ載ったボリュームたっぷりの沖縄そばに、なぜか刺身と目玉焼きと味噌汁と大盛りライスである。

どう考えても意味不明かつ脈略もこだわりも何もない組み合わせである。でも空腹マックスだったので大歓迎だ。


拍手喝采である。那覇に住むことになったら、この店の近くに住まいを構えようと固く決意した。隣の席のオヤジが食べていたソーキ汁定食も凄いボリュームだった。

東京でボーっと暮らしていると豚肉といえばトンカツか生姜焼きぐらいである。ちょっとハッスルして豚しゃぶを楽しむぐらいだろう。

沖縄の「ソーキ&てびち文化」は豚好きにとってはタマランチンである。これを書いているだけで泡盛の香りと豚連合の味わいが脳裏に浮かんでくる。

なんだか、今回の沖縄旅行では「ソーキ&てびち」しか食べていないような書きっぷりになってしまった。

まあ、実際そうだったから仕方がない。思い出すだけでヨダレの海で泳げそうである。

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