2014年3月3日月曜日

たまに壊れる日


常日頃、30代の人を相手に「ご苦労さんだねえ~」と言い続けている。自分の経験を思い起こすと、30代の頃は色々なことを厄介に感じて、物事をいちいち大ゴトと捉えて悶々としていた覚えがある。

突き抜けちゃった今になると、そんな壁のようなものに直面している世代に、心底ご苦労さんと言いたくなる。

とか言いながら、私だって時々、分けの分からないことで悶々とする。一応、いっぱしの大人である。孤独死の心配とか年金の不安とか、男性機能の低下とか悩む問題は山ほどある。

冗談はさておき、私だって人並みに鬱々する材料はある。まあ、たいてい数日で収まっちゃう程度だが、そんな時は、ちょっと壊れる。

壊れるといっても文化的?な感じではなく、単に暴飲暴食に走るだけである。

最近も深酒が続いた。よせばいいのに毎晩遅くまで飲んでいた。夜ごと、ゲロまでは行かないものの、気持ち悪くなってヘロヘロフラフラしていた。

そんな日が続くと、さすがに酒を抜く日を作る。ただし、悶々モードが続いているから、酒の代わりに「ドカ食い大会」になってしまう。

わが身の胃腸方面には迷惑をかけ通しである。いつか恨まれて反転大攻勢を受けて大変な目に遭うんじゃないかと脅えている。

とある週末の夜、ビミョーな飲み会に参加して、何だか疲労困憊になって、一足先に抜け出してタクシーを拾った。既に深夜だったのだが、運転手さんに家の近所の牛丼屋に立ち寄ってくれと頼む。

ところが、目指した牛丼屋が珍しく24時間営業ではなく、「夢の深夜牛丼計画」が頓挫してしまった。

おとなしく帰宅すればいいのに、コンビニに立ち寄ってもらう。どうでもいいジャンクな弁当をアレコレ買ってしまった。

オムライス、カツ丼、ドリア、たらこパスタである。

炭水化物しかない。さすがにタンスイカブラーである。酒に酔うとこういう行動が迷わず出来ちゃうから我ながら恐ろしい。

タクシーの運ちゃんもコンビニのお兄ちゃんも、間違いなく私が一人暮らしだとは思わなかったと思う。

帰宅して、ひとつだけ食べようと思ったのだが、ドリアとカツ丼をペロッと食べてしまう。暴挙である。バカ丸出しである。

おまけにそれを缶チューハイで流し込む始末だ。ここまで来ると「ゆるやかな自殺」みたいなものだと思う。

膨満感ゆえに、逆流性食道炎が暴れるのを抑えようと、枕を3つほど重ねて上半身を起こしながら眠りにつく。

当然、快眠には程遠く、お化けに追われる夢を見る。自業自得である。最近、お化けが出てくる夢をしょっちゅう見ている。深層心理に何か変化が起きているのだろうか。

そして翌朝、休日だったので爆睡したかったのに、眠りが浅かったせいで何となくモゾモゾ起き出す。

当然、胃部不快感とやらが私にのしかかる。

困ったことに、二日酔いだったり、暴飲暴食の翌日の朝は無性にジャンクな食べ物を欲しがる変な癖がある。

学生の頃は、飲み過ぎて胃液まで吐きまくった翌日の午前中に必ずトンカツを食べるという無気味な習慣があった。

あの頃ほどハチャメチャではないが、いまだに脳が覚えているようで、「ジャンクドカ食い指令」に気持ちが支配されてしまう。

冷蔵庫には、たらこパスタとオムライスが鎮座していた。どちらを食べようかと悩んでいるうちに両方ペロッと食べてしまった。

飢餓状態で死んだ人の怨霊が取り憑いたかのような行動である。

それから3時間ぐらい経った頃、たらこパスタが冴えない味だったことに腹を立て、家にある在り合わせのもので突然パスタを作り始めてしまった。

ツナ缶、かに缶、マッシュルーム缶。すべて缶詰である。あとは大量のオリーブオイルと、バジルやらイタリアンパセリやら、やたらと揃っているスパイス類をゴチャゴチャ混ぜる。

電子レンジでパスタが茹で上がる手抜き便利グッズを久々に使う。ソース作り、麺の茹であがり、全てひっくるめて10分程度で完成する。

麺は200グラム。知らぬ間に完食する。ここまでが昼間までの話である。

ヒマな休日は溜まったテレビ番組を見て過ごす。ヨーロッパをめぐる旅行番組を見ていたら、ウマそうな肉系パスタが紹介されていた。

時間は午後3時ぐらいだ。おやつを食べようと冷蔵庫を覗いたらフェットチーネの生パスタを発見。賞味期限が近づいていたし、レトルトのボロネーゼソースもたくさんあった。結局、また食べてしまった。

ペロリである。

カロリー過多。この日の私のカロリー摂取量は、未開民族だったら1週間分ぐらいに相当するのではないだろうかと心配になる。

そして夜がやってきた。やることもないし、近くのスーパーに買い出しに出向く。お惣菜コーナーに目が向いたが、さすがに我慢である。

食材などをアレコレ買っているうちに小腹がすく。いかん。我慢我慢である。

買い物を済ませて外に出る。ふと目に入ったのが蕎麦屋の看板だ。「もりそば一杯だけ食って帰ろう」と私の中の悪魔が囁く。

「もりそば程度ならいいんじゃないか」。私の中の天使も許してくれた。で、店に入る。

街場の普通の蕎麦屋である。そんなにウマい蕎麦が出てくるはずもない。マズい蕎麦なんか食べちゃったら損だよなあ~と、私の中の悪魔が路線転換を促す。

そして私の口が発したのは「天丼ください」という恐ろしい言葉である。タンスイカブラーの暴走である。

街場の蕎麦屋の割には結構高い値付けだと思ったのだが、出てきた天丼クンは、値付けに納得するような結構なボリューム。甘っちょろい天つゆが妙に食欲を刺激する。御飯もしっかり入っている。

秒殺ぐらいの勢いで完食した。

食べ終わった後、何かに負けたような気がした。猛烈な敗北感である。こんなことなら、珍味をツマミに酒を大量にかっ食らって寝入ったしまったほうが健康的だったかもしれない。

私にとって酒を抜く日は、かえって「危険日」であるという現実を想い知らされた。

酒を飲んでいればバカ食いはしない。私にとって酒はドカ食いを防ぐための避妊具?みたいなものなのだろう。

この日、確かに何かが壊れていた。炭水化物の王道のようなものばかり1日で5食分も摂取してしまった。

でも、これを書いていて思ったのだが、若い頃に比べれば小食になったと思う。初めて一人暮らしをした20代半ばの頃、出前を頼む妙な高揚感が病みつきになって、休みの日には昼も夜も3人前ぐらい注文して、毎度毎度すべて完食していた。

あれに比べれば屁のカッパである。

刑務所に1年ぐらい収監されれば、きっとスマートなイケメンになるのだろう。でも、悪いことをする予定はないので、今後も酒とメシという煩悩の海をさまよい続けるのだろう。

ごめんよ、オレの内臓達・・・。

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