2013年8月12日月曜日

ウナギ問題


ウナギ問題には困ったものである。いつの間にか高嶺の花状態になって、「ウナギを食べに行く」こと自体が特別な行為みたいになってしまった。 
重装備して登山に行くような、はたまた、武装して危険地帯に乗り込むような、どこか居ずまいを正して、心に渇を入れて、身震いしながらノレンをくぐるような雰囲気になりつつある。

乱獲、乱食がすべての原因だと聞けば、食べてはいけないものなのかと思ってしまう。そのくせ、牛丼屋がバンバン売り出しているし、スーパーにもざっくざっく並んでいる。



そもそもウナギは、日常食ではなく、「ご馳走」として君臨していたほうが収まりがいい。

牛丼屋あたりで、ものの10分ぐらいで食べ終わってはいけないような気がする。

本来なら異様に手間がかかる調理の関係で、ファストフードの対極にあるべきなのに、冷凍技術、輸送手段などもろもろの進化で、その在り方、立ち位置がゴッタゴタになってしまった。結果として品薄になってしまった。

都内のウナギ専門店では、上物だと鰻重が4~5千円、中には7千円オーバーというオッタマゲもある。仕入れ値の高騰が招いた悲劇であり、そんな値付けをする店が悪いわけではない。

大手資本なんかが、日常食として大量消費するために稚魚の段階で乱獲してきたツケが、専門店の高額化につながってしまったわけだ。

あんな値段では、専門店の未来は暗い。当然、長い間受け継がれてきたウナギ文化は衰退の一歩だろう。

資源保護の観点からみんなでウナギを食べないようにすればいいのか?それも違う。取ってきちゃった以上、キチンと調理してもらって美味しくいただかないといけない。

というわけで、ウナギをワシワシ食べに行ってきた。

神田に本店がある「きくかわ」。庶民的な雰囲気、東京っぽい味で人気のある店だ。この日は日比谷の支店に出かけた。

この店、本店よりも飲み屋的ツマミの充実が特徴だ。個人的な好みだが、ウナギ以外のツマミもそこそこ揃っている店の方がいい。

妙に凜とし過ぎた雰囲気のなか、蒲焼きが出来るまで、「じっと我慢」みたいなストイックな店はあまり好きではない。

その手の店のウナギが100点で、ツマミもそこそこ揃ってる店のウナギが780点なら、私は後者のウナギで構わない。そういう意味では、この店の「ノリ」は悪くない。

なぜかシメ鯖が抜群にウマかったし、酒飲みに嬉しい酒肴がいろいろ揃っている。



食べかけの肝焼きと食べかけの白焼きである。こういうウナギ系ツマミとそれ以外のツマミも頼んで冷酒をカピカピ飲む。至福の時である。

無駄話に話を咲かせて、たばこも吸えちゃって、ほろ酔い加減になって鰻重サマの登場を待つ。

この日の鰻重サマは上から2番目のサイズ。5千円近い値付けである。100円マックなら50個、一皿100円の回転寿司なら50皿、すなわち100貫食べられる金額だ。

気取りのないノホホンとした店の雰囲気に見合わない値段だが、こればかりは仕方がない。今のニッポンの現実である。

それにしても、値段が高騰すると、気の毒なのはウナギである。この日のウナギのことではなく、一般論ではあるが、ちょっと小骨が多いとか、少しだけ焦げ目が多いというだけで文句を言いたくなる。

ウナギ本来の特徴、調理の特徴を考えれば、ある程度は当然と割り切るべきだが、こうまで高くなると、以前は気にならなかったことが気になったりする。

ブスの鼻毛より、美人の鼻毛のほうが気になってしまうようなものだろうか。不謹慎な例えでスイマセン・・・。

あと30年もしたら、遠い目をしながら「昔、鰻重という素晴らしい食べ物があったんだよ」と孫に語りかける予定である。

その日のために、しっかり孫に解説できるようにするために、暴騰にめげずウナギを食べ続けたい。

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