2013年4月1日月曜日

コメに悶絶


最近、すこぶる調子がよい。よく寝られるし、変な二日酔いも減ったし、胃の調子も悪くない。

先日、半年ぶりに胃カメラを飲んできたのだが、いつも見てもらっているドクターいわく「かなり良くなってますね~。80点だね」とのこと。

80点である。合格どころか、最高点みたいなものだ。ウッシッシである。

体調がよいと食べ物も美味しく感じるから不思議だ。健康の有り難さをつくづく感じる。

胃カメラを飲んだ日は朝から何も食べられなかったので、検査が終わった昼頃にはスーパー空腹モードである。

そのクリニックの胃カメラは、特殊な眠り薬のような鎮静剤を使うので、終了後もフワフワと宙に浮かんでいるような気持ち良さが残っている。

最大限の空腹とフワフワ気分の相乗効果である。画期的なモノを食べに行く必要がある。

画期的なモノといっても、私の場合、しょせん炭水化物好きのタンスイカブラーである。特別なモノを食べようというわけではない。

「松屋の牛めし特盛り」もしくは「伝説のスタ丼・肉増し」でもガッツリ食べに行こうかと思ったが、せっかく空腹で銀座一丁目あたりにいるわけだ。そういう安直かつ無思想かつ非哲学的かつシュールな一品で終わりにするわけにはいかない。

で、フラフラと帝国ホテルにたどり着いた。バイキングを死ぬほど食べようか、いやそれだと太りすぎる。地下にある「ラ・ブラスリー」のピラフにしようか、いや、あれよりウマいピラフがあるはずだ。

しばし逡巡する。

以前、このホテルで一夜を過ごした時、ルームサービスで有り得ないぐらいウマいピラフを食べたことを思い出した。おまけにその時一緒にいた人にピラフの大半を食べられてしまった。

その時のことを思い出す時、私の頭の中ではいつも決まってコメが金ピカに光り輝いているほどピラフは美化されている。

ルームサービスを作っているのは、きっと1階のカフェだろうと勝手に判断して、いそいそと「パークサイドダイナー」に向かう。


シーフードピラフを注文する。この画像のブレが私の空腹と興奮を表わしている。ムシャムシャ食べてみた。ちゃんと美味しい。でも、あの日のルームサービスピラフとはまったく別物である。その点に深く落胆する。何かが違う。こういう落胆は実に切ない。充分ウマいピラフを口に運びながら私の心はネズミ色である。

部屋で食べたあのピラフは、どこで食べられるのだろう。良く考えればあれほどの規模のホテルだから、ルームサービス用の厨房は別にあるのだろう。

結局、「憧れのルームサービスピラフ」は私の記憶の中で今後も美化し続けることになりそうだ。

そうか、泊まって食べれば良いわけだ。そのうち実行することにしよう。

さて、コメついでにもうひとつ、先日食べた異常なまでに官能的だった「スーパー邪道メシ」の話を書いてみたい。


場所は、いつも出没している高田馬場の老舗寿司屋「鮨源」である。この店の「エロティックな一品」の代表格が「イカうに鶏卵」である。

正式名称は知らないが、その名の通り、新鮮なイカと上等なウニと健康な鶏の卵の黄身だけを和えた一品だ。ワサビと醤油で味のバランスを整えて堪能する。誰だって笑顔になるエロい味だ。

官能的な味をまとったイカを食べ終わるとソースというか、タレというか、卵黄ウニ和えだけが小鉢に残る。これに寿司飯を一つまみもらってグチャグチャ混ぜて食べるとこれまた最高である。

とある日、いつもように「グチャグチャ混ぜ飯」を食べようと思ったら、板さんが「ちょっと待っておくんなせえ」と低い声で囁いた。

不敵な笑みを浮かべて、私の「残り汁」をどこかに持って行ってしまった。裏でこっそり食われてしまうのか、心配になった私の心拍数は上昇する。


10分ぐらい経っただろうか、私の大事な「残り汁」は、光り輝くコメをまとった異質な一品として帰ってきてくれた。

「ウニ卵黄リゾット風焼きめし」である。あの残り汁に加えて白ワインとかカキのお吸い物で使うダシ汁なんかも加えて手短に炊き込んで、そして炒めたみたいな話だった。

それはそれは反則級のウマさだった。本来なら単にシャリに乗せられてすました顔で威張っているのがウニである。それがいろんなモノとミックスされ火攻めにあってグチャグチャにされて主役の座から引きずり下ろされて呆然としている感じ。

寿司の世界では究極的な邪道かもしれない。しかし、邪道にこそ驚きと感動が隠れているのも事実である。コメの奥深さ、お寿司屋さんの奥深さを改めて感じた。

コメ万歳である。

なんだかピラフと寿司だけ食べていれば私の残りの人生は幸せなような気がする。

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