2013年1月28日月曜日

バカみたいな所得税


インフレに向けて頑張るというのも何となく変な話だが、アベノミクスとやらの影響もあって、この国の努力目標は「物価を上げること」。

景気回復への起爆剤として金融緩和の方向で進んでいる。まあ、理屈は分かるが、狙い通りインフレになったところで、人々の収入が増加しないままでは笑い話にもならないことは猿でも分かる。

先週、税制改正大綱がまとまったが、景気回復を狙う目的で企業向けの減税措置がいくつか決まった。交際費課税の緩和だとか、研究開発や設備当時コストへの減税、はたまた雇用や給与を増加させた企業への減税なども盛り込まれた。

大新聞など一般メディアも企業減税を評価する論調が多いが、額面通りに受け取る中小企業はどれだけあるのだろう。

無いと思う。

日本の企業は全体の9割が中小零細規模である。日本の企業のうち、全体の7割ほどは赤字企業である。すなわち法人税を納めているのは全体の3割程度。中小企業に限定すればその割合はもっと少なくなる。

法人税すら払えない企業にとって減税策は何ら意味をなさないわけで、今回の減税措置は一部の大企業しか恩恵を受けないのが現実。

さて、個人のほうに目を向けると、孫への教育費贈与に新しい減税策が登場したり、住宅ローン減税を拡充したり、それなりに景気刺激に道筋をつけた形をとってはいる。

とはいうものの、所得税の最高税率を上げたり、相続税の課税対象者を大幅に増やすなど、大元である基幹税は増税指向が鮮明になった。

来年から消費税がアップすることを考えれば、相対的に個人の負担はグッと上昇傾向にあるのが実態だ。

所得税の最高税率は40%から45%に変更されるが、実はこれによる税収増の効果は、わずか300400億円程度だといわれる。まるで税収増につながらないわけだから、ただのパフォーマンスに過ぎず、実にバカげた話だろう。

今回の改正で、わが国の所得税の税率は5%から45%までの7段階の累進制になる。所得に応じて負担がそれぞれ変わる仕組みだが、その実態は、中堅高所得者だけが集中して税金を取られている極めていびつな構造になっている。

所得税10%以下の階層が全体のどの程度を占めるかご存じだろうか。

私自身、せいぜい半分ぐらいだろうと漠然と思っていたのだが、実際には全体の84%がこの階層。100人に84人が税率10%以下の階層だ。

何のための累進制だかサッパリ分からない変な話だと思う。

所得税の累進税率はたいていの国が採用しているが、税率10%以下の階層の全体に占める割合は、先進主要国でもせいぜい30~40%程度だという。日本の特殊性が際立っている。

所得税は文字通り、収入に応じて負担する税制上の基本中の基本。これがいびつなのだから税制全体のいびつさは推して知るべし。

人より稼ぐことが悪であるかのような、まるで罰金のような制度になっている。リッチマンが海外脱出するのも当然の話だろう。

ちなみに、5%の最低税率を6%にするだけで60007000億円の税収増になるらしい。ついでに言えば、全体の84%を占める階層の人の所得税を僅か1%上げるだけで「兆」単位の税収が増加することになる。

わずか数百億円の税収増にしかならない今回の最高税率の引上げの無意味さを痛感する。

景気を刺激したいのなら、可処分所得の高い階層を刺激することが手っ取り早いのは当然の話。「金持ち優遇」などという決まりきった批判がすぐに出てくるが、現行制度が「金持ち冷遇」なんだから、そんな雑音は無視すべきだろう。

お金持ちにお金をジャンジャン使ってもらわないと景気など良くなるはずはない。

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