2012年12月26日水曜日

熱海と伊東

ふらっと熱海と伊東に出かけてきた。旅と呼ぶには大袈裟な1泊の日程で、ちょろっと命の洗濯をしてきた。

転地療法という言葉でも分かるように、人間誰しも普段とは違う場所に身を置くと途端に気分が変わる。

煮詰まったり気分が滅入ったら、束の間でも近場でもいいから枕を変えて眠ってみるとリフレッシュする。そんなことを実感した。

新幹線でサクッと熱海に行って、老舗レストランでウマいものを食べて、ぶらぶら海を見ながら散歩したら、一足延ばして伊東で温泉三昧。これが今回のスケジュール。

熱海も伊東も勝手知ったる場所である。知らない場所を旅するのもワクワクするが、その逆も良い。アセアセせずにノンビリできる。


熱海のレストランは洋食の名店「スコット」。有名な店だが、今までは熱海だ伊東だというとすぐに寿司屋とか活魚料理屋を目指していたので初めての訪問。

シチューだのクリームコロッケだのグラタンだのオムライスだの、一連のニッポンの洋食が大好きな私にすれば天国みたいな店だった。

古めかしい店の造り、分かりやすいメニュー構成、ちょっと強気な値段設定も悪くない。そこそこの値段が付いていないと、この手の料理は大してウマくないことが多い。


この日、食べたのはエビフライ、グラタン、タンシチューなど。全部ウマかった。シチューは少しクドかったが、赤ワインと一緒に味わえばまた別な印象があっただろう。

妙にウマかったのがエビフライ。エビと衣の一体感が独特で、久しぶりに正しい?エビフライに出会ったような気がした。タルタルソースをベタベタつけて白ワインをグビグビ飲んで簡単に昇天。

その後、伊東に向かった。聞くところによると伊東は源泉数が日本トップレベルの多さだという。子供の頃、祖父が別荘を持っていた関係で身近な存在だった伊東だが、そんな話を聞くと途端に有難い場所に思えてくる。

無色透明な温泉だから今までとくに感慨もなく浸かっていたのだが、有難い話を聞いたせいで、今回泊まった宿の湯が保湿性、保温性の高い有難いものに感じた。


「淘心庵米屋」が今回の宿。全部で17室の規模。のどかにホゲホゲするには適度な規模だ。

すべての部屋にかけ流しの半露天風呂が付いているせいで、お客さんの多くは部屋に籠もるタイプの宿みたいだ。そのせいで大浴場も独り占めできた。前の日に本屋でまとめ買いした「黄昏流星群」をサウナにこっそり持ち込み、フムフム言いながら読破したりして気持ちよい時間を過ごした。

大人向けのマンガは温泉宿でただノンビリしたいときには最高だと思う。そんな真理?にこの年になって気づいた。

そういえば、もう20年ぐらい前に我が社が発行する新聞で劇画を連載したことがある。脚本は私が作っていた。漫画家さんと頻繁に打ち合わせをしながら、ちょっとしたシナリオライター気分だった。

税務調査官が主人公の変な劇画だったのだが、無理やりお色気シーンも盛り込んで好き放題作っていた。

あのマンガが大ヒットしていたら、今頃は印税がっぽがっぽでモナコあたりで暮らしていたのだろう。残念だ。


さて、妄想はさておき、伊東の温泉の話だ。

泊まった部屋はこの宿で一番眺望が良いという部屋。竹林の向こうに小さめの滝が見える。夜にはライトアップの効果で、紅葉がハラハラと滝や竹林に舞い散る風情を眺めながら湯浴みが出来た。

風流な景色を眺めていたかのような書きぶりだが、実際にはこの風呂でも部屋の中でも「黄昏流星群」三昧だった。

部屋はさほど広くないが、いわゆる和モダンの作りで落ち着けた。ローベッドが配置されているから布団の上げ下げで人が来ることもない。

食事は部屋とは別のフロアの個室に用意される。絶品というほどでもないが、季節感が上手に盛り込まれた品々に大満足だった。

夜の遅い時間には小ぶりの特製ラーメンが振る舞われ、朝食も品数豊富で、納豆嫌いの私には塩辛を選ばせてくれるなど全体的に丁寧なサービスが受けられた。

肝心の料金は伊豆箱根あたりの老舗高級旅館に比べれば3割ほど低い値段設定。部屋を選ばなければかなりリーズナブルに泊まれるみたいだ。

せっかくの1泊旅行だからあまりに大衆的なところはゴメンだが、凛とし過ぎちゃって逆にくつろげないような超高級宿も困る。

そういう意味では実に頃合いの良い宿だと感じた。

頭をカラッポにしたいような時には、気軽な1泊旅に限る。最近はそんな気分になりやすいから、こんなふらり旅をちょくちょく続けてみようと思う。

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