2011年12月26日月曜日

登別と湯の川

久しぶりに北海道に旅行に行ってきた。寒い時期に寒さが厳しい場所に行くのは旅の醍醐味。住んでいる人には悪いが、2,3日覗くには雪もドカンと降ってくれたほうが楽しい。

登別と函館に行ったのだが、普通は12月のこの時期、ガンガン雪が降ることは少ない。運良く今回は一面真っ白というパターンに遭遇したからバンザイ三唱の気分だった。

今回は運良く、どちらもしっかり雪景色を堪能できた。旅の目的は珍味と温泉。雪を眺める風呂の素晴らしさは言うまでもない。

まさに「頭寒足熱」という大自然での温泉の楽しさを堪能してきた。


最初は千歳空港から登別へ。目指す宿は「滝乃家」。老舗だが、3年ほど前に全面改装して、北海道屈指の上質な宿に生まれ変わった人気の旅館だ。

3年前に一人ふらっと寝台特急北斗星に乗って登別に行った際に泊まった宿だ。別な宿を体験したい気持ちもあったが、前回の快適さが印象深かったのでリピーターになってみた。

部屋付の露天に惹かれて前回よりグレードの高い部屋を選んでみた。源泉掛け流しのにごり湯が部屋にいながら味わえるのは贅沢の極み。粉雪が舞う山あいの眺めも風流で、まさに命の洗濯。

どうも最近は命を洗濯しすぎているような気がする。


部屋の食事スペースはリビングエリア、ベッドルームとは仕切られている。特筆すべきは、厨房から部屋の食事スペースに直接出入りできる扉があること。つまり、仲居さんは、ベッドルームやリビングを通らず配膳や片付けが可能というわけ。

隠れ家タイプの高級旅館としては実にセンスの良い発想であり、設計だと思う。

食後、ベランダで葉巻をふかしていたら、さすがに冷え切ったので、部屋専用の温泉に飛び込む。ウヘーとかオウッとかオッサン丸出しの奇声をあげて喜ぶ。

雪を眺めながらにごり湯に浸かり、レミオロメンの「粉雪」をサビの部分だけうなって好きな葉巻をプカプカする。なかなか経験できない極楽時間だ。


上機嫌で宿の庭を眺めていたら、ナマの、いや天然の、いや野生のエゾジカまで登場した。大きなツノを伸ばした結構なサイズのエゾジカが木の芽か何かをついばみにやってきた。

出来すぎだ。庭の一部がライトアップされているせいで、エゾジカが動くたびに薄ボンヤリと浮かび上がった幻想的なシルエットも揺れる。ホントに出来すぎな光景だった。


部屋の風呂だけでも充分なのだが、大浴場も捨てがたい。3種類の源泉が用意され、サウナもある。おまけに、客室の風呂に惹かれて訪れる客が多いため、大浴場も貸切に近い状態がほとんど。

大浴場から露天風呂には、外の階段を下っていく造りなのだが、この階段にも温泉が流され、足が冷たくならないように工夫されている。


谷底のような地形に造られた露天風呂からは雪をかぶった山肌の眺めが楽しめ、近くの川のせせらぎと野鳥の音色がBGM。こんな空間に一人佇んでいると、気の利いた恋愛小説ぐらい書けそうな錯覚に陥る。五感がリセットされた感じがした。

ハード面、ソフト面ともに北海道ではトップレベルの宿だろう。食事も派手さはないものの、ひとつひとつ丁寧に仕上げられ、総合的なコストパフォーマンスも首都圏近郊の高級旅館よりも確実に優秀だ。

チェックアウトが11時なのにメインの大浴場が朝の9時で終了してしまうのは、あり得ないほどのダメダメだが、それ以外は申し分ない宿だと思う。

今回の旅では、2日目の午後に函館に移動した。この日はこの時期の函館名物であるクリスマスイルミネーションを見物しようと、名物ツリーが部屋から見えるホテルに一泊。一足早いクリスマス気分に浸ってみた。


そして翌日、毎年のように訪れる湯の川温泉の「湯の川プリンスホテル渚亭」に移動。
「滝乃家」のようなしっぽり系でもなく、和モダンでもなく、強いて言えば昔ながらの大型旅館。

個人的に何年も前からこの宿がイチオシで、暇さえあれば行きたくなる。日本で一番空港から近い温泉が湯の川温泉であり、その中でも海っぺりの露天風呂の絶景が素晴らしいのがこの宿だ。


過去に何度も、当日や前日に突然行きたくなって函館に飛んだのだが、この宿の空きを確認してから航空券を買うパターンが私のお決まり。

男性用大浴場の露天風呂が海に突き出ているかのような造りで解放感が抜群。津軽海峡の眺め、押し寄せる波の音、群れ飛ぶカモメがいつでも楽しめる。夜になれば沖にはイカ釣り船の漁火がまたたく。

この宿のもうひとつの特徴が露天風呂付きの部屋の数が日本一だということ。なんでも120室ぐらいは部屋に露天風呂が付いているらしい。

ベランダみたいなスペースに無理やり作ってるような部屋も多いが、ちゃんと塩辛い源泉が引かれ、海側客室なら、津軽海峡を一望に湯浴みが楽しめる。


ほろ酔い気味で湯に浸かり、葉巻をプカプカ。口から出るのはジェロの「海雪」とサブちゃんの「北の漁場」、そして「津軽海峡冬景色」だ。演歌調の気分、勇壮な気分になる。

登別の宿がジャズでも流したい気分になるなら、湯の川のこちらは演歌で決まりだろう。

良し悪しウンヌンではなく、山側なら前者、海側なら後者。ノリも路線も目指す方向性も違う宿だが、どちらも素晴らしいと思う。

行ってきたばかりなのに、もう恋しくなってきた。次はいつ行けるだろう。

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