2011年12月16日金曜日

乱読

活字中毒などというとインテリっぽいが、どんなに夜遅くても何か活字を追わないと寝付けない。もちろん、眠る前の乱読だから、小難しいものはダメ。どこからでもナナメ読みできるような内容が中心だ。





結局、この手の雑学路線が多くなる。和歌集なら文化的なんだろうが、私が読んだ「若衆」の本は、江戸の性風俗でスター扱いされていた中性的演出を施した若い男子をめぐる色恋モノ。

金持ちを中心としたある種ステイタスとしての衆道(同性愛)の相手役としての位置付けはよく知られている。実際には、有閑マダムや禁欲に疲れた年増女性からも引っ張りだこだったらしく、夫婦で若衆の取り合いをするような悲喜劇もあったらしい。

なかなか勉強になった。

そんなことを勉強してどうしようというのだろう・・・。

乱読のターゲットに選ぶのはどうしても下ネタ方面が多くなるのが困りものだ。画像で紹介した本は、確かすべて会社の近くにある古本屋で購入した。

100円、200円程度だと思うと、ついつい余計な雑学本を仕入れたくなる。ただ、タイトルがいかにもな感じでも、読み始めると学者さんが格調高く解説するばかりで、ちっとも面白くなく、純粋に睡眠導入剤になる本も多い。

昔の吉原とか花魁を研究したような新書にも随分チャレンジしたが、たいていは完読できず放ったらかしだ。

下ネタ系、悪所系の文化論みたいなテーマが大好きなのだが、とっつきやすいタッチで書かれている良書があれば是非教えていただきたい。

伝説の俳人「鈴木しづ子」に関する本もなかなか楽しく読めた。にわかブームに乗って私も興味をもっていたのだが、古本屋のおかげでようやくその世界に首をつっこめた。


ダンサーになろか凍夜の駅間歩く

黒人と踊る手さきやさくら散る

娼婦またよきか熟れたる柿食うぶ

実石榴のかつと割れたる情痴かな

夏みかん酢っぱしいまさら純潔など


ごくごく普通の情緒的な俳句も無数に残しているのだが、「娼婦俳人」「情痴俳人」というレッテル通りの作品がやはり目を引く。

戦後混乱期、俳句の世界にパッと現れ、行方知れずになった伝説の人だそうだ。当時の時代背景を思うと、その刹那的な本能の叫びが痛々しくもある。

敗戦で人生を狂わされ、裸一貫で生きていくはめになって、お節介な社会秩序や綺麗事に過ぎない薄っぺらな道徳にアッカンベーをした女性だ。

こういう存在と作品を知ると、無節操に乱読する習慣も悪くないと思う。ひょんなことでひょんなことを知る。何か役に立つ本を読もうとか、売れ筋の本を片っ端から読んでみようとか、身構えて本と向き合ったってろくなことはない。

漫然と気になった本を手に取り、パラパラとめくって、運良くその本の世界に没頭できればそれで良し。

まあ、そんなこんなで、自宅では、風呂やトイレ、ベッドなど私の居場所すべてが読書スペースだ。

自宅といえども、ちっとも休まらないので、家にいる時はなるべく本の中に逃避行するようにしている。活字の世界が時に私を救ってくれる感じだ。

最近は、色川武太、吉行淳之介あたりの軽めの随筆や紀行文を読んだり、先日このブログでも紹介した壇一雄の「火宅の人」を読了した。

さきほど紹介した鈴木しづ子の俳句もそうだが、昭和の香りがする文体に惹かれているみたいだ。

「火宅の人」では、いくつかのフレーズがが妙に印象的で、読みながら結構な数の付箋を貼ったりした。

含蓄のある?箇所をひとつ紹介したい。

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 男女はお互によく呼応するように生まれついている。しかし、きわめて不安定に呼応するように生れついているだけで、結婚と云う管理の方法も、そのきわめて不安定に呼応する男女の天然の性情に、少しばかりの安定度を持たせたい意味合いからであるだろう。
 なるほど婚姻の制度は、人間社会の安穏に、いささかの貢献をした。しかし、結婚が暗黙のうちに私達に要求する徳義や忍耐は、少しばかり大きめに過ぎるのである。
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