2011年10月21日金曜日

オトナの眼

朽ち果てそうなオッサンにときめく「枯れ専(カレセン)」なる女性が存在するらしい。良い心掛けだと思う。

やはり男には歴史が必要だ。春や夏よりも秋のほうが実り多いのと同じで、熟女ならぬ熟男(じゅくお)こそが正しい男の姿を表わしている。

ちょっと力んでしまった。

いきなりくだらないことを書き始めたが、先週、日本を代表する枯れた場所に行ってきた。京都だ。あの街は観光業界における「カレセン」みたいな存在だ。


そこら辺にある無名の神社仏閣が平気で千年単位の歴史を持つ。江戸時代の建立などと聞くと、「なーんだ、新しいじゃん」と素通りしたくなるほど街中が枯れ?まくっている。

世界遺産もゴロゴロしているし、あえて言うなら街全体に歴史を背景にした妖気すら漂っているように感じる。

風流で文化的という意味での枯れた感じ、ポジティブな意味での枯れた感じは、他の都市を凌駕する。大人こそ修学旅行的な時間を過ごすべき場所だ。

今回は少しだけ仕事の用事を片付け、残りの時間は気ままな旅を楽しめた。ゆっくり歩き回ったのは何年ぶりだろう。確か40代になってからは初めてだったと思う。

今の年齢であの街をふらつくと、何が見えて、何を感じるのだろう。ちょっと大袈裟だが、そんな興味をもって出かけてみた。

実際に、ウロウロしてみて感じたのは、やはり自分の眼が向く対象が昔とは随分違ってきたということ。

壮麗な清水寺の威容とか、きらびやかな金閣とかではなく、大規模な寺の周囲に点在する塔頭の庭だったり、竹林のざわめきや苔の色合いなどに魅せられた。


ちょっと風流人を気取っているみたいで、小っ恥ずかしいが、本当にそういう風に感性が変わってきたのだから仕方ない。

若い時には京都っぽさをわざとらしく演出した店や施設なんかに有り難さを感じたが、この歳になると、わざとらしい感じが鼻についてしょうがない。

世界中の観光客、日本中の修学旅行生を相手にする土地柄、そういう演出も必要だろうから、あまり辛口なことは言えない。実際に意図的な京都っぽさの演出なしに観光客があれほどまでに集まるはずもない。

私自身も何だかんだ言って先斗町の細い道にひしめくそれっぽい店を眺めながら散策するとウキウキする。要は演出するなら、なるべくさりげなく演出して欲しいという話ではある。

クドクドと書いてしまった。


この写真は、若王子神社側の哲学の道でのヒトコマ。週末だったので、二年坂、三年坂あたりは人混みも凄いだろうと思って、こっちを散策。正解だった。

ちっとも哲学的なことは頭をよぎらなかったが、草の香り、水辺のきらめきを楽しみながら、ほのぼのとした気分で歩いた。

10月の青空の下、こんな道に佇めば、ささくれだった心も丸くなる。嬉しいひと時だった。

行ってみたかった場所が東福寺。京都駅に近い割には今まで未体験だったのだが、以前テレビドラマで東福寺の通天橋が印象的に使われているシーンがあり、一度この橋廊を歩いてみたかった。

http://www.tofukuji.jp/keidai/tuten.html

この橋から眺める紅葉は京都を代表する景色のひとつなのだが、紅葉シーズンには早く、夕方に近い時間帯だったので、訪れる人も少ない。実に気持ちの良い時間が過ごせた。

通天橋を堪能し、枯山水の方丈庭園を眺めながら和んだ時間を過ごし、周辺にある塔頭のひとつにも足を運んだ。雪舟が造った庭が自慢のその小寺では、他に観光客がいなかった。独占状態。

夕方の風が竹林を揺らす音、鳥の声、秋の虫の音色。聞こえてくるのはそれだけ。庭を眺めながらタイムスリップしたかのような時間を過ごす。

そのまま暗闇に包まれれば、かぐや姫を連れ去った月の使者が現れそうな雰囲気だった。

どうせなら本当に連れ去られてしまいたいような衝動に駆られた。ああいうのを、たおやかな時間とでも表現するのだろうか。今年一番心がやすらいだ瞬間だったと思う。

詩仙堂、曼殊院、その他には平安神宮の神苑など今回は庭ばかり見て歩いた。そういう気分だったんだろう。

行き当たりばったりの散歩にも励んだ。出町柳商店街で名物の豆餅を買ったり、近くの御所や同志社周辺の住宅街を散策したりした。

夕暮れ時の街の雰囲気は観光地を見ているだけでは分からない趣がある。商店街の肉屋で買った唐揚げを頬ばったりしながらぶらついてみた。

だから、毎日余裕で1万歩以上歩いていたのに体重が増加するハメになった。代謝機能に問題があるのだろうか。

そういえば、旅の楽しみである食事について書くのを忘れていた。次回も京都ネタで引っ張ることにする。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

富豪記者様

季節の変化や旅情を慈しむ、富豪記者様の京都での徒然なる思い、とても楽しませて頂きました。

「妖気」という言葉はまさにピッタリだと思ったのですが、個人的にはその気の遠くなるような歴史や人間の所業を抱え込んできた土地のイメージから、何か京都には気軽に行けないものを感じて今に至っておりました。でもそんな偏狭な事を言っていては人生損しますね(笑)。ブログでご紹介頂いた場所など、今度是非訪問してみようと思います☆ 追伸:写真もとっても素敵でした!

玉より

富豪記者 さんのコメント...

玉さま

気軽に京都に行ったほうがいいですよ!

夜の祇園や鴨川あたりの妖気は他の地域では味わえない感じです。