2011年8月29日月曜日

フォーシーズンズホテル

高級ホテルに感じる憧れというか、高揚感には独特なものがある。人によって違うだろうが、私の場合、ホテルでお茶だ、食事だ、待ち合わせだなどというだけで妙に気分が高まる。

なんでだろう。

幼い頃、現役経営者だった祖父に連れられて会社の周年パーティーだとか、ファミリーイベントのようなホテルの催しに出かけた頃の体験がベースになっているのだろうか。

蝶ネクタイをして、頭をポマードで固めたキッチリした大人の男性がキビキビ働いている。集う人達もどこかおめかしして、非日常的な感じを楽しんでいる。

そんな印象が昭和の時代のホテルには色濃かったように思う。

私が小さい頃は、帝国ホテル、ホテルオークラ、ホテルニューオータニが漠然と「エラい」位置付けで、パレスホテル、京王プラザホテルとか、キャピトル東急ホテルあたりが「まあまあエラい」ような印象があった。

外資系ホテルなど無かったから、昨今のいわゆるホテル戦争を見聞きしても、個人的についつい日本の古参組に肩入れしたくなる。どこか判官贔屓?みたいな感覚なのだろうか。

ペニンシュラだコンラッドだリッツカールトンだとか、最近はカタカナ外資が高級ホテルの代名詞になっている。確かに演出上手だし、日本中の腕っこきホテルマンを引き抜いたりして、必死に質を高めようとしている。

ドメスティック男の矜持として、とんがっているカタカナホテルを避けてしまう私だが、たまにはお茶や食事に出かけることもある。でもどこか落ち着かない。

外資系のなかで一か所だけ、私が妙に思い入れがあるのがフォーシーズンズホテルだ。

フォーシーズンズホテルと言えば、ヨーロッパやハワイやバリ島あたりでも、高価すぎて泊まらずに、食事やお茶を楽しみに行っただけだ。そのあたりはちっとも富豪ではない。

東京では丸の内にもあるが、私が好きなのは文京区の高台・椿山荘の一角にあるフォーシーズンズホテルだ。場所が場所だけに、孤高というか、一種独特の存在感がある。

文京区ってところが良い。流行とか最先端とは異質のホンモノの東京っぽい場所だと思う。区長が幼稚園時代からの旧友なのがシャクにさわるが、そればかりは仕方がない。私自身、文京区は好きなのだが、住民票とかいちいち旧友の名前で証明されるのがイヤなので、隣の区に住んでいる。

なんといっても、このホテルは私の会社からクルマで10分もかからずに行けるので親しみがあるし、使い勝手がいい。オープン当初に比べると、こなれてきたというか、角が取れてきて良い感じだ。

池袋周辺エリアにあるホテルといえば、巣鴨プリズン跡地の墓標である?プリンスホテルか、JR系の高級ビジネスホテルであるメトロポリタン(中華はかなり美味しいです)ぐらいで、それ以外は百花繚乱のラブホテルばっかりだから、「ホテルの高揚感」を感じさせてくれる目白台のフォーシーズンズホテルは貴重な存在だ。

実は私の最初の結婚式はここでやった。自分の住まいや勤務先から近かったという点が最大の理由だったが、アマノジャッキーとしては、15年以上前のあの当時、こんな僻地?で結婚式を挙げる人が少なかったから迷わず選んだ。

そういえば、照明を真っ暗にした会場でデザートが炎に包まれてサーブされていたことを思い出した。実に小っ恥ずかしい過去だ。若気の至りだ。

親友の応援団出身男が現役の学ラン応援団を引き連れて太鼓をガンガン叩いて祝ってくれたのだが、あのホテルでは、その後、披露宴会場に太鼓持ち込みが禁止されたと聞く。若気の至りだ。

割とすぐにその結婚自体をやめちゃったから、大いなる無駄を費やしたことになる。いにしえのあの日、お祝いしてくださった方々、いまさらながらスイマセン。

まあ、そういう恥ずかしい過去は別として、それ以外にもちょくちょく使ってきた。会社帰りにここのバーに寄って葉巻をプカプカ、アルコールをグビグビしてから帰宅したことも何度もある。一種の止まり木に使っていた。

このホテルの良さは、場所柄ゴミゴミしていない点だろう。ロビー周りはいつもすがすがしく適度に凛とした空気が漂う。

全体的に暗いトーンで統一されているが、不快な感じはなく、適度な重厚感につながっている。

椿山荘の緑がどこにいても良い景色になっており、椿山荘と共有する庭も都内では貴重な散策コース。初夏は螢が舞い飛ぶ。

この夏は、全国から集めた風鈴が庭園内にいくつも設置され、灯籠の明かりの中、涼を呼ぶ音色が気持ちを和ませる。

都内中心の高層ビル系のホテルではこの感じはどう逆立ちしても味わえない。オフィスビルと同居しているようなイマドキの外資系ホテルにどことなく漂うインチキな感じは、立地自体の問題に尽きる。

ビルの一部分だけ異空間にしようとしても無理がある。高級ホテルを名乗るのならビルの外の段階から異空間になるような演出は必要だ。巨大庭園を持つ立地を活かしたフォーシーズンズホテルは、その点かなり有利だ。

正面玄関に車を横付けしてそのまま乗り捨てられるバレットパーキングも気分がよい。
車を運んでくれるドアマンさん達も優秀で、何度か使っていると、すぐにこちらを名前で呼ぶ。大したもんだと思う。

都内中心部では帝国ホテルが好きな私なのだが、あの駐車場ビルをグルグル登っていく感じだけはわびしくて嫌いだ。まあ、常に運転手さんとともに行動するようなVIPになれればそんな目には遭わないのだろうが、そうだとしても自分で運転していきたい時だってある。

フォーシーズンズホテルの場合、駐車場の立地がすこぶる使い勝手が悪いので、しょうがなくバレットパーキングが一般的になっている。そんな背景があるだけの話なのだが、結果オーライだ。

大きすぎないホテルならではの良さは、館内で迷子にならない点にもある。方向音痴では人に負けない私だ。ここでは、すべてが分かりやすく配置されているので助かる。

ロビー奥のカフェラウンジで楽しめるアフタヌーンティーも都内屈指の穴場だと思う。窓の外に見える緑を眺めながら、ソファ席にどっかり腰をおろせば、ひとときの現実逃避が可能だ。

ホテル開業時、鳴り物入りでオープンした超高級中華の店は無くなってしまったが、イタリアンに和食、ビストロもあるので、食事にも困らない。

実は格安デイユースも手配するやり方があるし、宿泊料金も昔とは比べようもない破格値を探すやり方もある。

と誰かが言っていた。

小さいながら設備の整った室内プールやジャグジーもあるし、スパや綺麗な温泉大浴場もサウナ付きで用意されている。客室もベーシックなカテゴリーでも充分広めだ。

私がもっと稼げて、ついでに無頼に生きていける事態になったら、きっとこのホテルに長期逗留するような気がする。

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