2011年4月1日金曜日

疑問だらけ

今更ながらのテーマだが、国や自治体の役割ってなんだろう。震災後の対応を見ていて、どうにも腑に落ちないことが多い。

小難しい話になるが、わが国は地理的な特性もあって、歴史上、安全保障上の脅威をあまり経験していない。

さきの大戦は別として、大昔の蒙古襲来とか、江戸末期の黒船来航ぐらいしか教科書でも教わらない。惨敗した大戦にしても、結局のところ占領は短期間だったし、植民地になったわけでもなく、基本的な文化や言語は維持された。

こうした背景もあって国とか地方自治体って何のためにあるのか、国民の誰もがピンとこないまま、なんとなくその存在を認識しているだけだろう。

だから、選挙で代表者を選ぶ時でも、知名度だけが重視され、落ち目のタレントやクラリオンガールが平気で圧勝したりする。

そもそも国や自治体の役割は「国民や住民の安全保障」が根幹だ。すなわち、国民や住民の生命・財産を守ることが基本中の基本であり、最優先事項だ。

みんなが税金を納めている意味もそこにある。所得税や法人税は節税策によって逃れられても、極端な話、消費税がある以上、ヤクザだろうが、アナーキストだろうが、国に税金を納めている。

納税するという行為自体が国や自治体に対して、その役割を委託していることに他ならず、相手側が基本的な役割を放棄したら、詐害行為であり、契約違反であり、裏切りだ。

原発問題は、政府発表の内容より深刻化していることはもはや周知の事実だ。諸外国の報道機関はもちろん、東京電力の影響?が及ばない国内の地域メディアですら、首都圏とは違う角度からその危機的状況を伝えている。

関東の人間が聞かされている内容はかなり恣意的に脚色されていると考えておいたほうが無難だろう。

パニックを防ぐため、無用な不安を煽らないためといった大義名分にも理はある。それはそれとして、中長期的影響に言及しない国や自治体の姿勢は疑問だ。

相変わらず拡散が続く放射性物質だが、政府の発表を要約すると次のような表現になる。

「放射性物質が付いている野菜を食べてもOK」。

「汚染された水を飲んでも問題ない」。

「海に出た汚水は薄まるから魚を食べても問題なし」。

おまけに「プルトニウムを食べても大丈夫」ときたもんだ。

もちろん、本当に微量ならすぐに悪影響が出るわけじゃないだろう。ただし、この状態が一過性で終わらないのなら、累積するわけだから危険に決まっている。

だいたい、安全だの大丈夫だの言われても、それが60才、70才の人の話なのか、幼児や子どもも同列に捉えていいのか、サッパリだ。

過剰な風評被害は害悪だが、それぞれの人がそれぞれの立場に会わせて不安を持ち、心配し、なんとか安全策を探りたくなるのは当然だ。

それにしても、政府発表を聞いていると、いつから日本人は放射能に負けない体質を手に入れたんだか不思議な気持ちになる。おまけに各種の基準値とやらも「緊急時」だから数値を緩和しようという動きが顕著だ。

そもそも何のための基準値なんだろう。メタボの数値じゃあるまいし、安全のための基準ではないのだろうか。

「直ちに」影響を及ぼすことがないのならば、「いずれ」はどういう悪影響が考えられるのか、そして、それを避けるために何をすべきかを示さないのなら意味がない。

この問題に関する国や自治体の仕事はそこに尽きると思う。

放射線などの測定値を各自治体が公表している。場所によっては、1週間も前の数値を発表したところもあるようだ。大事なことは、その数値がどのぐらいになったら何をすべきかを不測の事態まで考慮した上で国や自治体がアナウンスすることだろう。測定だけなら素人だって出来る。

放射能の怖さは十年、数十年単位で悪影響を及ぼす点だ。国や自治体担当者にとっては、そんな先のことはあずかり知らぬという感覚なのだろうか。

いまも放射性物質は飛散し続けている。微量とはいえヨーロッパでも観測されたほど膨大に漏れ出している。

それでも、原発からたった100キロ、200キロしか離れていない関東圏では、春休みの子ども達が公園でさかんに遊び、水を飲みながら事故前と変わらない暮らしを続けている。

当然、「直ちに影響がない」という国の発表を信じているからだ。10年、20年後に深刻な影響が生じても、「直ちに」ではなかったわけだから、国の言い分はウソではなかったという理屈になる。

アメリカの大統領が、わざわざエアフォースワンでの移動中に菅首相に電話会談を求め、原発大国フランスの大統領がわざわざ緊急来日した。また、フランス原子力大手のアレバ社トップも乗りこんできたし、アメリカ海兵隊の放射能専門部隊140名が緊急時のために日本で待機することも決まった。

こうした一連の異例な事態は、政府発表のノンビリした?内容と実際の危機との温度差が大きいことを意味している。

IAEA(国際原子力機関)が福島県の特定エリアに対して、既に避難基準を超える状況だと勧告した。国が出した屋内待避指示圏の外側のエリアだ。これを受けた国の対応は「調査する」というもの。

自国民の念のための安全を考え独自の待避指示を出していた個々の国の指針とはまるで意味が違う。わが国の政府は、その筋の専門国際機関から、避難指示圏の誤りを指摘されているわけだ。

国民の生命や安全を守るという第一優先順位が徹底されていないのなら、もはや国家の体をなしていないというレベルだ。おぞましすぎる話だ。

今日は、とことん重く暗いテーマに終始してしまった。不安を煽るような気持ちはまったくないが、「深度6で壊れる原発」「デタラメだった安全神話」という国の裏切りに無性に腹が立つ。

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