2011年1月12日水曜日

冬のウナギ

最近は靴の話ばっかり書いているから、今日は食べ物の話。

食べ物の季節感は大事だが、それにあまりとらわれすぎても面白くない。「季節外れのウマさ」にぶつかるとちょっとトクした気分になる。

わが家には夏に余らせておいた冷やし中華のタレがいくつもある。寒い冬とはいえ、二日酔いの時とか、胃がもたれている時には冷やし中華が嬉しい。

ラーメンの麺だけを茹でて水切り、そこに冷やし中華のタレを投入して簡単に出来上がる。同じ感覚で冬も割と頻繁にソーメンも食べる。夏だけの楽しみにするにはもったいないと思う。

夏は夏でクーラーで冷えた身体をおでん屋さんで癒すのも悪くない。生ビールとおでん、これまたいい組み合わせだ。

こんな話を書き始めたのは、先日食べたウマいウナギがきっかけだ。なんとなく「暑気払いグッズ」のような位置付けのウナギだが、冬こそウマイと痛感した。

シンシンと冷えるとある冬の夜、神田の外れにある「大江戸」に出かけた。名高いウナギ専門店はいくつもあるが、ウナギ以外の酒肴が置いていない店が苦手な私だ。その点、この店はツマミが結構充実。風情もしっぽりしていて穴場だと思う。


日本酒の品揃えも豊富だ。官能的不健康中年親父ノックアウト珍味も揃っている。

まずはタラコの煮物だ。マズいはずがない。どう考えても日本酒だ。熱々のお燗だ。煮付けられたタラコが口の中でパラパラとほぐれていく。燗酒のふくよかな味わいがその余韻に追い打ちをかける。ウヒョヒョ。


つづいて、アンキモだ。このアンキモがまたニクい。ウナギ専門店だけにちょっと変わった味付け。「山椒煮」だ。甘めの味付けに山椒独特の風味がプラスされて、これまたオヒョヒョヒョだ。

この手の珍味と熱燗の競演を楽しむためなら、冬の寒さも大歓迎だ。つくづく熱燗のある国に生まれた幸運を神に感謝したくなった。


ウナギ屋のツマミといえば横綱的存在が白焼きだ。わさび醤油でちょろちょろ食べる白焼きのウマさは、ウナギの白焼きがある国に生まれた幸運を神に感謝したくなる味だ。

ウナギの白焼きには燗酒より冷酒だ。さっそく十四代とか磯自慢とかの冷酒をグビグビ呑みながらムハムハと楽しむ。

そしてすっかり酔った頃に鰻重さまの登場だ。

この日は何段階も用意されている鰻重の中で「極上」を選んでみた。生きているウナギを注文後にさばくので小1時間は待つ必要があるのだが、ツマミを楽しみながら酒をグビグビしていたわけだから、ちっとも待つ感じはしない。


極上というお名前だ。そのせいか大きさも文句なしだ。お重に収まりきれない尾っぽのほうは折りたたんである。この見た目の演出?がまた嬉しい。

タレも甘すぎず、ウナギ自体のふっくら加減もバッチリ。変なクドさもない。酔っぱらいながら上機嫌で頬ばる。嬉しくて無言になる。

鰻重がある国に生まれた幸運を神に感謝した。

こんなことを書いているだけで、あの香りが脳の中に甦ってきた。また行きたい。ウナギバンザイ。

いろいろな方面に元気を与えてくれるウナギ様だ。だんだん下降線をたどっている私にとって救世主でもある。

ウナギが生息する星に生まれた幸運を神に感謝しないといけない。

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