2010年8月23日月曜日

社長室あれこれ

「社長室」のイメージってどんな感じだろう?。中小零細企業から大企業まで企業規模で違うが、当然、社長個人の趣味や嗜好が反映されていることが多い。

役所の中の大臣室とか次官室、長官室ともなれば、一見、立派なスペースだが、頻繁に主が交代するため、その人個人の個性はあまり見あたらない。

民間企業のオーナー社長ともなれば、オンとオフの切り替えなんてないわけで、24時間が“社長”であり、同時に24時間が“私人”だ。だから社長室も個性豊かなことが多い。

若い頃、わが社の新聞でオーナー経営者のインタビュー記事を担当したことがある。20回ぐらいの連載だったので、いろいろな「社長室」を取材にかこつけて見ることができた。

それこそ全面赤じゅうたんの広~い部屋、お茶を持ってくる女性がうやうやしくひざまずくような貴族趣味のところから、道具や書類に埋まって足の踏み場もないような下町の技術系社長室もあった。

仕事してる雰囲気が全然感じられないゴルフ用品しか目に入らなかった趣味人社長室とか、数千冊はありそうなほど部屋の全体が本棚に囲まれている社長室もあった。

某チェーンストア業界の重鎮社長の部屋も印象的だった。まさしく社長用という感じの立派な事務机と椅子があるにもかかわらず、社長さんは、常時床に直に座って書き物をしたり、書類をめくっている。

靴を脱ぐ部屋なので床に座るのもおかしくはないのだが、高価そうなソファセットも荷物置き場と化している。使っている形跡がない。

事務机やソファを上目遣いに眺めながら、私も床にアグラをかいて社長さんにインタビューした。なんとなく畳の上で談笑しているような不思議な感覚だった。日本人の本来の姿はそっちが正しいのかもしれない。

とかく、オーナー企業の社長さんは、巷で公私混同的な要素を批判される。公私混同ぐらいなければ誰が中小企業の社長なんか引き受けるのかという真っ当な反論もある。

程度問題ではあるが、オーナー社長ともなれば「会社イコール自分」という自負が強い。創業者であれば尚更で、公私混同をしている感覚自体が薄いのだろう。

「仕事に関係のないものは会社の経費では買えませんよ」などと言われても、すべてが「仕事を充実させるために必要だ」と本気で思うわけだ。

社長というポジション以外の人からは不自然に映るのだろう。だから、税務署とモメる。公務員である税務職員には理解できないだろう。

社長室に豪華な家具を置こうが、高級美術品を置こうが、はたまた、バーコーナーを作って高級酒を備蓄しようが、「業務用」として利用されるなら、会社のカネを使っても何も問題はない。ルールに乗っ取って、経費計上したり資産計上すれば済む話。

最新型のテレビやエアコンといった家電を購入しようが、立派な神棚を設置しようが、お気に入りの陶芸家に作らせた壷を置こうが、会社で利用するものは会社のカネで調達するのが普通だ。逆に会社で使うものを社長個人のお金で買う方が不自然だ。

30年ぐらい前になるが、まだ元気だった祖父が旅行先の台湾で突然、大理石の高価な円卓を衝動買いした。6~7人が囲める大きさの重厚な丸テーブル。値段も当然それなりに高い。

子ども心に「こんなもん、どこに置くのか?随分カネ遣いが荒いな・・」とか思ったのだが、日本に運搬されたそのテーブルは会社に運ばれ、会議室件役員応接室に設置された。

いわば、社長個人が立て替え購入した会社の「什器備品」を後日会社の費用で精算したという単純な仕組みだ。

そのテーブルは30年近く経ったいまも会議室で重厚に輝いている。そう考えると高い買い物ではなかったし、公私混同といったマト外れな批判を受けるものでもない。

決定や選択をする際に、社長が自分の趣味を押し通せるということが「公私混同」と批判されるのならまるでピンボケだ。でもイジイジした大衆目線にへつらったメディアは、そんな程度のことを色メガネで語りたがる。

業績不振で困っている会社なら、贅沢品を社長室用に購入することなどない。そのあたりの厳しさは役人なんかが考えているよりすっとシビアだ。

法人税を納めている企業が全体の3割程度になってしまったいま、キチンと税金を納めているような会社ならバンバン消費行動に励んでもらいたい。そういう会社がなければ経済の活性化などない。

そういう会社にはどんどん贅沢をしてもらいたい。ねたみや嫉妬で足を引っ張る風潮にはウンザリだ。結局、景気浮揚の邪魔になるだけ。

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