2010年6月7日月曜日

風化させるな

晴耕雨読。一般的にはなかなか叶わない夢だが、資産家の鳩山前首相にとっては簡単な話だろう。

世の中を引っかき回したうえに「国民が聞く耳を持たなくなった」ことを理由に政権を放りだした鳩山前首相。次期衆院選には出馬せず、引退後は農業に携わりたいそうだ。うらやましい晴耕雨読。

首相退任後に影響力を行使してはならないという持論を貫くのは結構だが、どうにもスッキリしない。

世の中は既に菅首相の動向にスポットライトが当たっており、前首相は一気に過去の人。政治的に死んだことは事実だが、そのまま放置されていいのかは、ちょっと疑問が残る。

沖縄・米軍基地問題の混迷を思えば辞任は当然だ。むしろ逆に続投が許されていたなら、政権公約とか首相の言葉というものがデタラメでも構わないというお粗末な先例を残しただけだろう。

政治家の仕事は歴史が評価するといわれる。鳩山前首相にも功と罪があるのだろうが、何よりのトピックスは脱税疑惑だろう。しつこいようだが、この問題を風化させてはいけないと思う。功の部分をすべて消し去る汚点だ。

毎月1500万円、総額12億円にのぼる母親からの資金提供を「知らなかった」で通した前首相。相続税、贈与税に苦悩する納税者を根本的に愚弄した話だ。

前首相は修正申告を済ませたことで落着済みというスタンスだが、決してそんなことはない。修正申告ですべておさまるならマルサは不要、税務署など必要なくなる。

ばれたから慌てて申告しても、国税の調査はそれをもって免罪符とはしない。すなわち前首相の脱税疑惑も国税が動く気になれば、これからでも立件はあり得るわけだ。

あくまで税法上の時効がくるまで司直がどう判断するかは未知数だが、国税当局内部に「強硬派」が多いのは事実。ひょっとすると“ただの人”になった途端、前首相への強制捜査という事態が起こりえるかもしれない。

鳩山前首相の脱税疑惑で問題なのは“贈与税はバレてから払えばいい”という空気が生まれてしまったこと。実際、このまま更なるお咎めなしという事態になったら、誰もが、わざわざ積極的に贈与税申告などしなくなる。

「見つかってから加算税付きで納めりゃいんだろ?」。罰せられないならそういう空気が蔓延するのは当然ともいえる。

現職総理大臣がしでかした税金の不始末。間違いなく歴史に残る不祥事だが、本人の退場とともに風化させてはいけないテーマだと思う。

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