2010年4月21日水曜日

チェイス 国税査察官

「チェイス~国税査察官」というドラマがNHKで始まった。以前に「ハゲタカ」でヒットを飛ばした硬派系のワクとでも言おうか、それなりに骨太の番組だ。

主役は江口洋介。その昔の映画デビュー作「湘南爆走族」での“怪演”を思うと、マルサの男をシリアスに演じている姿に時代の流れを感じる。おっと、話がそれた。

税金の世界って、とかく固い言葉が飛び交い難解で専門的なイメージがつきものだが、演出の仕方によっては、エンターテイメント要素がたっぷりだ。時たま今回のようにドラマ化されることがその証しだろう。

伊丹十三監督の「マルサの女」のせいで、いまやマルサという専門用語も一般的になった。本来、マルサは国税機構の中でも特殊な1セクションなのだが、現実の世間では「税務調査」全体を指す言葉として定着している。

高額で悪質な脱税だけを検察庁に刑事告発する役割がマルサの仕事。通常の税務調査とは性格が異なる。だから普通の税務調査体験を「ウチにマルサが来た時の話だけどさあ」などと分かったような表現をするとあらぬ誤解を生む。

マルサがターゲットにするのは、相当な悪(ワル)。狙われたらその大半が刑務所行きになっているのが現実。

「マルサが来た」イコール「刑事犯」。知ったかぶって使うと「私は悪質な守銭奴です」という意味になるのでご注意を。

今回のNHKドラマではマルサの「内偵班」が重要な役割だが、このセクションの徹底した隠密主義は、税金の世界では有名な話だ。

かつて、雑誌のグラビアでマルサが特集された際にも、職場風景のカット写真に写っていたのは広報課の職員ばかり。本物のマルサは内偵の際に顔バレしたら苦労が水の泡になるため顔出しNGを貫いていた。

ところで、マルサとは別の一般の税務調査でも世の社長さんにとっては対処が難しい。調査対象は過去の決算内容。法的には7年前の分までさかのぼれるが、実際の運営はケースバイケース。普通は3年前までがチェックされる。

ごくごく些細な間違いであれば、指導ということで、それ以後の経理処理の是正を要求されて済むこともあるし、同じ内容でも、しっかり修正申告を求められることもある。

全国の国税局、税務署では税務調査の段取りにバラツキが生じないように何かと内部のルール作りが行れているが、裁量が絡む場合、その指摘内容の深さに開きが出るのはある意味仕方のない話だ。

人間が行う以上、裁量の度合いに微妙な違いが出るものだが、この部分を詐欺師などのイカサマ連中が目をつける。

「ホントなら5年前までさかのぼって修正申告させられるはずだったのをオレの力で3年分で済ませてやった」。こんな感じだ。

こういう話はチマタでよく聞く「税務署に顔がきく」ななどと自慢げに語る人々から出てくる。このセリフ自体が胡散臭いと思った方がいい。ナントカ・コンサルタントなどの肩書きがあれば尚更怪しい。

もちろん、世の中には「税務署に顔がきく」人は大勢いる。国税局や税務署出身の、いわゆるOB税理士なんかは「顔がきく」という表現はウソではない。

ただ、「顔がきく」の意味は曖昧だ。元同僚、元部下がいるだけでも当てはまる。「顔がきく」イコール無理が通るとか税金が安くなるというイメージは短絡的だ。

いまの時代、知り合いがいる、いないで税額に差が出るというベタな話が実現するとは考えにくい。基本的にはそう考えて間違いない。

そうは言っても「顔がきく」「顔が広い」ことの効果は色々な局面で発揮される。どこかの後進国のように生々しい“ズブズブ・コネ行政”はさすがに珍しいだろうが、行政上のちょっとした“ヒダ”の部分では「顔がきく」意味は存在する。

まあ少なくてもハエや蚊のように頼みもしないのに寄って来て、さも税金が安くなるみたいな話をする連中の中にはホンモノはいない。

税務調査をめぐる微妙な話はキリがないので省略するが、その辺の事情が必要ならわが社の新聞がオススメです!

単純に宣伝になってしまった・・・。

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