2010年3月24日水曜日

旅鮨

一人で旅に出ると食事の問題が少し厄介。せっかくの旅先、その土地ならではのウマいものをそれっぽい店で味わいたい。

郷土料理が自慢の料亭なんかだと一人では入りにくい。ラーメン屋や定食屋で済ますのも味気ない。目的地が海に近ければ結局寿司屋を選ぶ。

「旅鮨」。勝手に私はそう呼んでいる。旅鮨の良さは、知らない土地にいる解放感を手持ちぶさたにならずに楽しめること。

ポツンと4人テーブルに案内されてしんみり食事するより、カウンター越しに板さんと世間話でもしていれば酒のピッチも進む。仕事関係とかどうでもいい連れに横に座られるなら一人で座ってる方が百倍快適だ。

これまで印象的なお寿司屋さんを随分訪ねた。そこそこ下調べもするし、地元の人の情報にも頼るので、大きく外すことはない。それでも相性が合う合わないはたった一度の訪問でもはっきり分かる。居心地がよい店なら何度でも行きたい。

ざっと思い出してみても富山市の「難波」、唐津市の「つく田」、札幌の「ふしみ」あたりは再訪したい店。快適な空間でプロの技が味わえた。

備前市伊部の「心寿司」、京都「呑太呂」網走「むらかみ」あたりは地元色が濃かった。旅先ではその土地ならではの気配や食材にありつきたいが、そういう点で印象的だった。

他にもこのブログでいつも激賞する函館の「梅乃寿司」、千葉・館山の「大徳家」あたりは“旅鮨”を振り返ると瞬間的に頭に浮かぶ。

名前を忘れてしまったお寿司屋さんの中にも結構印象的な店は多い。銚子市内の某店では、昼から酩酊していた私を酔い覚ましに午後の仕入れに市場まで連れて行ってくれた。

店に戻って再び痛飲。しまいにはクルマで駅まで送り届けてもらって切符まで代わりに買ってきてもらった。

鹿児島の某店では、目の前で揚げてくれる出来たてアツアツのさつま揚げをどんどん進められ、ナマモノを食べずに酩酊した。

居心地の悪かった店にも随分あたってしまったが、なるべくそういう記憶は抹消するようにしているので、楽しい思い出ばかりだ。

先日、静岡の伊東を訪ねた際に新たな旅鮨記録が加わった。「松鮨」という名の小さいお店だ。観光地・伊東だ。駅周辺の店は避けようとネットの評判を頼りに駅から結構離れたお店に狙いをつけた。

昼時だ。混雑覚悟で行ってみたが、先客は無し。カウンターだけの古い店で良く言えばレトロ、悪く言えばちょっとボロい。

以前、鳥取県の境港でこの手のレトロ寿司屋に入って居心地の悪い思いをした記憶が甦る。引き返そうか少し悩んだが、喉が渇いていたので思い切って突入。

年輩の大将が、奥からのっそり登場。威勢の良い感じは皆無。でも温厚そうな様子にちょっと安心。

ビールを頼んで、あれこれ食べたい旨を最初に伝える。ランチ握りの客ではないことを何気にアピール。ゆっくり腰を落ち着けていろいろ注文する客だと判断されれば、向こうだって悪い気はしないはずだ。

金目鯛と平目を刺身でもらう。金目鯛が妙に美味しい。軽く昆布ジメされているのがその秘密だという。大げさに喜んで食べていたら、大将もそれなりに乗ってきてくれた。

わかめの根っこを使った酢の物の小鉢が出てきた。チョロッと出してもらう一品を喜んで、その手の珍味が大好きだと言うことをアピールすると、たいていはまた違った一品を用意してもらえる。

こげ茶の珍味が登場。ひとくち食べてみると内臓系珍味を味噌漬けにしたような濃厚な風味。実にウマい。正体を当てようと必死にアレコレ言ってみるが全然当たらない。

正解は金目鯛のアラをすりつぶして6時間煮込んだものだという。味噌はまったく使っていなかった。甘味、旨味が凝縮されて酒の肴コンテストをやったら上位入賞間違いなしだと思う。

普段なら、とことん呑みまくるパターンだったが、そのあと野暮用があったため、時間にもさほど余裕が無い。仕方なく刺身をちょっと追加して握りに移行。


金目鯛の昆布ジメが素直に最高だったので3貫も食べる。小アジの酢ジメも単純明快にウマかったので普通サイズのアジと食べ比べたりして、これもオカワリ。

地元静岡のわさびにこだわりがある店なので、千切りにしたわさびで巻物も作ってもらう。シャリも至極真っ当で何個でも食べられそうな味だった。

店構えやサイズから見て、まさに「鄙にも稀な・・」的な印象を受けたが、大将とあれこれ話をしていたら結構な有名店だったみたいだ。

「男の隠れ家」とか「dancyu」に何度か掲載されたらしい。大将は一見無口な感じだが、そんな話をちょっと自慢げにしている姿は素直に可愛い。

ネタがたくさん揃っている路線ではなさそうだが、ピンポイントで地元産のウマいものを堪能したい時にはオススメだ。

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