2009年12月14日月曜日

首相の偽装献金と金丸事件

どうにも気持ちが悪い展開になってきた。鳩山首相の献金問題についてだが、一連のインチキ工作は、どっからどう見ても脱税の臭いがプンプンする。にもかかわらず、なぜだか政治資金規正法の範囲で決着しそうな雲行きだ。

弟の邦夫元総務相も登場し、一族ぐるみの資金移動の金額は想像以上の規模にのぼる。時効分まで考えれば数十億円という規模と考えていい。

それなのにいつのまにか、「修正申告して贈与税を納付」という行為がさも免罪符であるかのような雰囲気まで出てきた。実におかなしな話。

一般紙の報道では「兄弟揃って母親に依存」といった論調が目立つ。これだとあくまで政治資金を母親が提供していたという構図に矮小化されてしまい、根本的な問題がぼやかされる。論点があえてずらされているような感じさえする。

わが社の新聞では、この問題を鋭意取材中だが、国税内部からもいろいろな話が漏れ聞こえてくる。

鳩山兄弟のリッチマンぶりは周知の事実。それなのに長期に渡って母親から資金提供を受けていた事実は何を意味するのか。政治資金が足りなかったからという理屈は成り立たないだろう。

“税的な視点”で捉えれば極々単純な話になる。政治資金団体を利用した相続税逃れと見るのが、ごくまっとうな解釈だ。

政治資金団体が持つカネは相続税がかかる個人資産ではない。政治資金団体を先代から引き継ぐ際にも、あくまで個人資産ではない以上、税金はかからない。

世襲議員の問題も、本来は親の資産を政治団体のカネに化けさせることで、相続税の洗礼を受けずに受け継げるという点にある。

今回の鳩山首相らの資金移動問題もこうした意図で計画されたと見るのが普通だろう。

おまけに鳩山首相の場合、巨額な資金移動を証書も利子のやり取りもないのに母親からの貸付金と言い逃れようとしていた。この行為自体が、税法上、悪質な脱税を定義する「仮装・隠ぺい」にあたるように思う。

一般の脱税事件は、「バレそうになったから修正申告」では許されない。“税務調査を予知した修正申告”にはペナルティーがあるし、巨額悪質事案なら事前に修正申告したってマルサの摘発を逃れられない。

今回の件も、修正申告したら済むという話だとは思わない。

ちなみに、今回の件に関連して、その昔の金丸元副総理の事件を思い出す向きも多いだろう。

佐川急便事件に関連して5億円の違法献金
が発覚したものの、政治資金規正法違反での罰金20万円という超安直な決着。国民の怒りは大沸騰。検察の威信も地に落ちたのだが、国税を中心とした“巻き返し”で、急転直下、金丸逮捕という事態に発展したというもの。

今回の鳩山首相の件では、世論の反応は鈍い。しょせんお金持ち一族内のカネのやり取りみたいなイメージが強い。贈収賄みたいな臭いが無いから、舌鋒鋭く批判を展開するような知識人もいない。

今後については、やはり国税当局の動向がカギを握る。

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