2009年11月20日金曜日

恋の奴隷

昨日書いたカラオケ屋での話の続き。「オザキ」をリクエストされたから「尾崎紀世彦」の歌を熱唱する私。同席オヤジから微妙に核心を突いた指摘をされた。

「不倫の歌ばかり選びますねえ」

そうかもしれない。なんかその手の歌が好きみたいだ。現時点で不倫関係の人がいるわけではない。

募集中だ。


♪愛~しても 愛しても 嗚呼~人の妻♪(大川栄策の「さざんかの宿」)という歌詞みたいにあまりにストレートな不倫の歌は感心しない。

もっと切ない感じがいい。たとえば、サザンの「LOVE AFFAIR」で描かれる次のような世界だ。

♪愛の雫が果てた後でも何故にこれほど優しくなれる♪

実に深い歌詞だと思う。まあそんな心情は長く続くものではない。とはいえ、そんな心情になること自体が不倫関係の不思議な魔力なのだろう。

我が敬愛するハマショーにも似たような歌詞の曲がある。

♪抱いても悲しくて 果てても寂しくて♪(BREATHLOVE LOVE)

いやはや男性的な不倫感覚は「竹内まりあ」あたりが歌い上げる女性的不倫感覚の世界とは微妙に違う。

男だから言うわけじゃないが、男のほうがイジらしい感じがする。

不倫という言葉の定義は曖昧ではあるが、いつのまにか“火遊び”や“浮気”も含まれるようになった気がする。

火遊びも浮気もしょせんは定義付けは難しいが、これらはやはり不倫と呼ぶにはパンチに欠ける。

やはり「不倫」というからには大川栄策が心底つらそうに熱唱しているような顔付きにならないといけない。

楽しいイメージだとダメだ。一応、“犠牲者”がいる以上、ハッピーな感じは表面上は避けたい。

どうも不倫方面に話がすべっていきそうなので歌の話に戻る。

いにしえの昭和歌謡にも不倫を前提とした名曲がいくつもある。弘田三枝子の「人形の家」なんて実に切ない。

♪ あれはかりそめの恋
 心のたわむれだなんて
 なぜか思いたくない
 胸がいたみすぎて
 ほこりにまみれた 人形みたい
 待ちわびて 待ちわびて
 泣きぬれる 部屋のかたすみ
 私はあなたに 命をあずけた ♪

かなりドラマチックだ。イマドキの歌とは違って想像力をかき立てるような広がりを感じる。

さてさて不倫業界?の頂点に位置する名曲中の名曲といえば「ホテル」だろう。ビミョーな男性演歌歌手達が競作して大ヒットした。

高校生だか大学生だった私が、家族に連れられて行った団体旅行の移動バスのなかで、ガイドさんに勧められるがままにアカペラで熱唱してバス中をしーんとさせてしまった曲だ。

♪手紙を書いたら叱られる
電話をかけてもいけない
ホテルで会ってホテルで別れる
小さな恋の幸せ
ごめんなさいね 私見ちゃったの
あなたの黒い電話帳
私の家の電話番号が男名前で書いてある
奪えるものなら奪いたいあなた
そのために誰か泣かせてもいい
奪えるものなら奪いたいあなた
一度でいいからあなたの肌に
爪をたてたい♪

この歌、2番の歌詞では、「あなたの家の日曜日」をこっそり見に行ってしまうから困ったものだ。「あなたは庭の芝を刈っていて、奥で子どもの声がした」のだから悲惨。

見にいった方も見られた方も大変だ。

それにしても「ホテルで会ってホテルで別れる」って凄い関係だ。現実の世界では無くはないのだろうが、一般人の世界では珍しいはずだ。私もそんな経験はあまりない。

ところで、昭和歌謡といえば不倫に限らず、男心をくすぐる女性像を描いた名曲がたくさんある。当時の女性がそういうタイプばかりだったはずはない。しょせんは男性作詞家が描いた世界。すなわち、男性側の願望みたいなものだ。


私が子どもの頃に衝撃を受けた歌詞が奥村チヨの「恋の奴隷」だ。とにもかくにも凄い歌詞だ。


♪あなたと逢ったその日から
恋の奴隷になりました
あなたの膝にからみつく
小犬のように
だからいつもそばにおいてね
邪魔しないから
悪い時はどうぞぶってね
あなた好みのあなた好みの
女になりたい

あなたを知ったその日から
恋の奴隷になりました
右と言われりゃ右むいて
とても幸せ
影のようについてゆくわ
気にしないでね
好きな時に思い出してね
あなた好みのあなた好みの
女になりたい  ♪

いやあ、こんな女性がいるはずもないが、単純な男心的には無条件にはまる歌詞だ。

ある意味、こんな歌が一世を風靡した時代がうらやましい。ジェンダーとかなんとか騒々しい昨今なら、女性団体の抗議必至って感じだ。

ちなみにこの昭和歌謡は3曲とも作詞者は「なかにし礼」。

偉人だ。

人間国宝に指定しても良いと思う。

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