2009年6月9日火曜日

佃喜知

上等な大人の居酒屋。ありそうでなかなか無い。住宅街は別として、新宿や渋谷など繁華街の規模が大きくなればなるほど見つからない。若者向けのチェーン店居酒屋ばかりが幅を効かせている。

銀座の場合、とくに6~8丁目あたりは、客の年齢層が高いため、大人向けの飲食店は多いが、場所柄、気軽に居酒屋的ノリで使える店は案外見つけられない。

数寄屋通りに位置する「佃喜知」は、そういう観点からすると貴重なお店だろう。ジャンル分けするならば、料理屋さんというよりも居酒屋に近い。でも、至極真っ当な食べ物を出す。

真っ当な、という言い方は正しくないかもしれない。非常に美味しい魚料理を楽しめる。

1年前に100メートルほど移動して雑居ビルの3階に構える。移転前は数寄屋通りからちょっとそれたディープな路地にあった。

以前の店内は狭く、オジサンがワシワシと呑み食べ談笑する雰囲気は、新橋、有楽町的世界を少しばかり上等にした感じで、なんともいえない空気が漂っていた。

移転後、小綺麗になって、ややゆったりした。快適になったが悪く言えばフツーな感じになってしまった。でも、魚河岸料理と看板にうたう魚の旨さは相変わらずだ。

久しぶりに訪ねた日、注文したのは、刺身盛り合わせ、鰯の梅煮、焼きタラコ、焼き椎茸、ぬか漬け、クジラの竜田揚げ、シジミの味噌汁などなど。

文字にすると実に面白くないラインナップ。奇をてらったものはない。ただ、そこがポイントで、素材が良いからストレート勝負で充分。

創作料理みたいな意味不明なシロモノが苦手な私は、何の変哲もない名前ばかり並ぶお品書きに逆に惹かれる。この日は焼き魚を注文しそびれたが、何を食べても満足する。かつて旬のサンマの塩焼きが死ぬほど旨くて泣きそうになったのもこの店だ。

お刺身は、この店の特徴でもある上等なマグロの中落ちが抜群。その他、カツオ、シマアジ、タコ。どれも味が濃かった。満足。

焼きタラコも素直に美味しい。火加減も良い感じ。正しい日本のタラコ。

この店の良さは、画像や文章で伝えるのが難しい。大人が安心して、肩肘張らずに旨いものを食べながら酔っぱらう場面には最適。

お客さんの大半がまさにオヤジ。女性連れよりもオヤジ連ればかり。オヤジのオアシスなんだと思う。

私にとっては、時たま顔を出す勝ち組クラブ「M」の真ん前という立地が良いのか悪いのか微妙なところ。

「佃喜知」で濃厚なオヤジモードに身を置いた後は、目の前の店で綺麗どころに消毒してもらいたくなる。「M」のおねえさん達のせいで、ヘベレケオヤジからチョイエロオヤジに脱皮する。

このパターンにはまると、せっかく出かけた銀座でも半径20メータルぐらいで4~5時間過ごしてしまう。
なんとも微妙だ。

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