2009年5月25日月曜日

渋谷 15の酒 毛髪

渋谷で人にあったついでに、午後のひととき界隈を散策した。渋谷という街に抱くイメージは人それぞれだと思うが、私にとっては、まさに初期青春の街だ。

80年代中盤ぐらいだったろうか、チーマーとか呼ばれる種族の登場で一気に歌舞伎町化が進んでしまった印象がある。それまでは十代の若者にとって刺激的な街だった。

私も学校帰りや休日には、いそいそと渋谷通いにはげんだ。高校生の頃、放課後の過ごし方にもいろいろあった。学校の近所の喫茶店でダラダラしているか、帰宅方面が同じ連中と沿線の店でふざけるのが基本だったが、渋谷まで出る時は少しだけ高揚感があった。

土曜の午後とか、買い物などの企画モノがある日は、悪友達と渋谷に出かけた。一種の“ハレの日”みたいなものだったんだろう。

大学生になり、社会人になり、渋谷には縁遠くなり、大人になってからは本当に用のない街になってしまった。そのため、先日の散策は単に懐古趣味に徹してみた。

渋谷通いをせっせとしていた当時から現在までの時間の流れは、バブルとその終焉をはじめ、世相が大きく変わった時と重なる。

当然、街の変貌ぶりは凄まじく、再開発でエリア自体が一新されたところも多い。一番多く通ったカフェバーのハシリみたいな店は、マークシティの登場で周囲の町並みもろとも消滅した。

センター街、スペイン坂、公園通り方面あたりは、地形自体は変わらない。ただ、その当時は流行の先端だった店が入っていたビルも今ではただのクラシックビル。

あの頃、よく目にしたレンタルルーム(同伴喫茶の発展系です)は絶滅している。漫画喫茶のペア個室とかいう怪しげなものが、その地位を引き継いでいるらしい。

出店自体が衝撃的だったタワーレコードも見あたらない。サッカーゲームのために友人達が集っていたような店も絶滅、ラブホテルばかりでハードルの高かった道も今では普通の繁華街として機能している。なぜか「人間関係」というシュールな名前の喫茶店だけは現役だった。

散策中、頻繁に立ち止まったり、蛇行する私は周囲を歩く若者達に舌打ちされたりした。我がもの顔で街を歩く連中に腹が立ったが、四半世紀前、私自身もそんなふうにオヤジ連中を邪魔者扱いしながら我がもの顔で歩いていた。因果はめぐる。

面白いもので、その場所に身を置くことで、忘れていた記憶がいくつも甦った。でも、この植え込みで誰それがゲロを吐いたとか、中条きよしがオーナーのカレー屋に通ったとか、どうでもいい記憶ばかり。

思えば15歳の頃、とにかく背伸びがしたかったのだろう。飲めもしない酒に興味が湧いて、背伸びついでに「ボトルキープ」に初挑戦したのも渋谷だった。

バドワイザーとかプリモ、コロナあたりのビールとか、流行っていたトロピカルドリンクとやらは悪友もみんな経験済みだ。それならば、もう一歩進んで、未知の世界であるボトルキープとやらをしてみたい。。。

そんな可愛くもおバカな発想で友人と2人、とあるパブ風の店へ出かけた。宇田川町、東急ハンズ裏の小高い坂の上にその店はあった。

薄暗い照明にスリットの入ったロングスカートのオネエサン達・・。それまではシャレで酒飲みの真似事をするにも喫茶店の夜間営業しか知らなかったお子ちゃまな私だ。異常に緊張した記憶がある。

友人も同様。普段はアホ丸出しで騒いでいた間柄だったのだが、場違いな空気に圧倒されてお通夜のように見つめ合って過ごした。

ロバートブラウンのボトルがキャンペーンで2400円だった。はっきり覚えている。ボトルカードを作るために名前や住所を書けといわれた。控えめな私は、自分ではなく友人の名前を提供した。

数ヶ月後、友人の家に店から案内状が届いた。文面には「ボトルの期限が間もなく切れます」・・・。同じく15歳だった友人は父親からボコボコにされたらしい。愉快な記憶だ。

今思うと「ませていた」というより「バカだった」と表現したほうが的確だろう。なんであんなに背伸びしたがったのだろう。ほっといても年は取るのに・・。

その後、お恥ずかしいことに飲酒喫煙が学校にバレて結構長い期間の停学処分を喰らった。そりゃそうだ。あんなに周囲が見えない視界の狭い若者がアルコールを摂取したら絶対に社会に対して迷惑だし危険だと思う。

ちあみに停学処分ついでに髪の毛もばっさり切らされた。坊主処分だ。当然、渋谷に行く気にもならず悶々とした時間を過ごした記憶がある。

そして、毛が伸びはじめた頃、格好付け直そうと美容院に行った。渋谷に行きたい一心だったのだろう。ところが、中途半端な長さの髪は変なパーマをかけられて「江夏投手」のような髪型に変身した。大仏みたいな髪型だ。結局、渋谷がまたまた遠ざかった。

そして20ウン年が過ぎ去った。今の私はすっかり少なくなった毛髪も、突き出てきた腹も気にせず平気な顔で渋谷の街を散策できる。

年を取ることはいろんな気取りや気負いが無くなるのでとても快適だ。

今日は何を書きたかったのだろう。。。

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