2009年4月15日水曜日

公私混同 役員社宅

オーナー経営者ともなれば、いろんな分野で強いこだわりを持っている人が多い。クルマの趣味しかり、着るものの好みしかり。ライフスタイルに強い個性を感じさせる。

私のように数十万円のサウナをセコセコ買ってどこに設置しようか悩むようなら可愛いもので、自宅建設時にどーんとサウナを浴室隣に注文設計する人もいる。

クルマ好きの知人の自宅には、駐車場という名の冷暖房、水回り完備の“建物”を持つ人もいる。こだわりだしたらキリがない。

オーナー経営者の世界では、自宅を役員社宅として建築することが珍しくない。会社とプライベートの区別を本心からしていない経営者も少なくないため、何かと「公私混同」を問題視する税務署的視線からするとこのテーマは興味シンシン。

自宅を役員社宅として建設して、費用を会社で負担しても税務上の規定に沿った家賃を会社を支払っていれば、普通は特別な問題は生じない。

世の経営者の中には、24時間すべてが仕事とばかりに、家だけでなく、自宅用のパソコンやFAXなども会社の経費で購入することもある。なかには、リフレッシュ目的でマッサージチェアも会社経費で購入する人もいるらしい。

税務上、何を買ったらダメという明確な決まりがあるわけではなく、あくまで「業務に必要」だということが立証できれば、会社経費でこうした商品を買うことに問題はない。

マッサージチェアだって会社の福利厚生用備品としての計上は可能だが、さすがに設置場所が自宅だと税務署的には問題視されるだろう。会社に置いて束の間のリフレッシュ目的で使用するなら、税務署としても絶対ダメとは言いにくい。このあたりは事実認定の世界だ。

備品以前に、自宅を役員社宅として建設するケースでは、それなりに自分の嗜好を加えたくなる。ホームシアターしかり、サウナだってそんな嗜好品のひとつだろう。

「このサウナでリフレッシュしているから毎日バリバリ働けるんだ。あくまで仕事のための道具だ。業務用と考えて何が悪い」というのがワンマン経営者のホンネ。

気持ちは理解できるが、税務署の考えは「それが無いと仕事が出来ないはずはない」と経営者の気持ちをただの屁理屈だと一蹴する。それが現実だ。

ちなみに、役員社宅がオーナー経営者のこだわりを反映しがちなことを裏付ける税務上の取扱いが存在する。いわゆる「豪華役員社宅」に関する制限規定がそれ。

まず一定の床面積基準。床面積240㎡を超える物件は「豪華役員社宅」と認定され、一般より格安で済むはずの社宅としての家賃計算が認められなくなる。建坪73坪当たりがモノサシになっているわけだ。

次に床面積自体は問題なくても、入居者の趣味嗜好を強く反映している場合には、やはり社宅としての格安家賃特典が認められない決まりがある。

一般的には、「プールがある家」、「茶室がある家」といった例示がされているが、実際上は、明確な線引きは難しいのが現実。例示されているような装備がない場合、よほど極端なケースでなければ税務調査であまり問題視される可能性は低いだろう。

経営者側としても、「会社への税務調査で社宅の装備までチェックされるはずはない」とタカをくくっている人が多い。確かに会社所在地を訪ねてきた調査官が別住所にある役員社宅まで見に行くはずがないと考えるのは当然。実際、そんなケースは聞いたことがないが、かといって安易に考えるのも危険。

いざ調査官が役員社宅に関心を示すケースを想定しよう。当然、社宅として造ったのであれば会社内に竣工図や仕様表が保管されている。ニセの安普請物件の資料を用意すれば別だが(そんなことをすると脱税です)、保管資料を吟味すれば建築の素人である調査官だって10分も眺めていれば役員社宅が普通のものかどうか分かってしまう。

「あまり問題視されることはない」は「絶対セーフ」と同義語ではないことはお忘れなく。

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