2009年4月3日金曜日

贈与税というシロモノ

追加経済対策の検討が進んでいるなか、注目のマトになっているのが「贈与税の減税」。突如浮上した感もあるが、以前から自民党の一部議員らが強く主張していた。

麻生首相自身も自民党税制調査会に検討を指示しており、消費刺激策の目玉として実現する公算が強まっている。

問題は減税の規模。いくらまでの贈与を無税で認めるのかがカギだが、一説には期間限定で2500万円までの無税贈与を認めようという話もある。

現行制度では、年間110万円までの贈与なら税金はかからない。これを一挙に20倍以上にしようという話だ。なかなか気前のいい話。実現するか否かはなんともいえないが、大衆迎合しか頭にない政治家の中からこういう発想が出てくることは素直に評価したい。

今後本格化する議論の中で必ず出てくるのが「金持ち優遇」というお決まりの反対意見。金持ちだけにメリットがある制度はケシカランというのが、政策論議ではお題目のようなバカのひとつ覚えとして出てくる。

あくまでこの政策の目的が、景気刺激、消費刺激にあるのなら、金持ち優遇批判を正義のようにふりかざしてもまるで意味がない。

お金持ちに動いてもらわなければ景気や消費が活性化するはずがないことは猿でも分かる(猿には分からないか・・)。

たった「110万円」しか認められていない贈与税の無税枠は、平成13年にそれまでの「60万円」から拡大された。およそ2倍増という水準は大幅拡充に見えるが、実際は微妙なところ。

というのも、「110万円」に拡大される前の「60万円」という枠は実に25年もの長きにわたって手付かずだった点が見逃せない。

その他の税制上の控除枠は、国民の所得や物価、地価上昇に合わせるように25年の間にどんどん拡充されていたのに、贈与税の無税枠だけは置いてけぼり。平成13年度改正でようやく見直されたが、そうした事情を考えると拡充幅はちっとも大きくはない。あくまでも「金持ち優遇」批判を恐れるお役所的体質が「無税での贈与は悪いこと」という前提に立ってちょこちょこ改正したに過ぎない。

家を買ったり、クルマをを買ったりといった消費に回すことを条件にすれば、贈与税の無税枠は大胆に拡充した方が生産的だろう。「金持ち優遇」を批判するより、積極的に金持ちを優遇することは景気対策の早道だ。

優遇、優遇とくだらない批判をする前に、現状は「金持ち冷遇」が経済政策の基本になっていることを考え直す必要がある。

「冷遇」を普通レベルにすることは決して「優遇」とは言わない。

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