2009年3月10日火曜日

函館 梅乃寿司

ここ5年ぐらいの函館通いで何軒のお寿司屋さんを回っただろうか。函館には魚介類・珍味食いを目的に出かけることが多いため、必然的にお寿司屋さんめぐりばかりしている。

少なく見てもざっと15軒は訪ねただろう。昼でも夜でも、基本的にアルコール片手に珍味や刺身、一品料理を堪能してから握りをもらうパターンだ。

ある意味、一番高くつく注文の仕方だ。旅行という非日常の時間の中で気が大きくなっているわけではない。最初に訪れた時に、わんさか注文をすることで、その店の価格帯がどの程度か分かる。再訪するかどうかのポイントになるわけだ。

東京でもトライするやり方だが、居心地や味がバッチリでも、いくらなんでも的な値段の店も多い。

函館の場合、さすがにお勘定の段になって目ん玉が飛び出る思いをしたことはないが、内容からみて、そりゃないよ的な勘定をもらったことはある。そういう店は、味も居心地も悪い。

お寿司屋さんだらけの函館で15軒とか20軒程度経験したところで、函館の寿司通みたいな顔をするのはおこがましい。とはいえ、前述のような注文の仕方でじっくり向き合ってきた以上、そこそこピントを外していない自負はある。

そういう視点で見て、今回、初めて訪ねたお店は、間違いなく函館トップレベルと断定して良いだろう。

店の名前は「梅乃寿司」。人様の評判に加えて、ネットでの評判もすこぶる高く、以前から気になっていた。

インターネット上の評価ほどアテにならないものはないが、それでも、然るべき食べ方をしている大人に激賞されていれば大当たりの確率は高まる。

先日、登別で温泉を満喫した後、特急で函館へ。遅めの昼時にお邪魔した。場所はどちらかといえば住宅街。この立地自体に店の気構えを感じる。

もともとは、函館近郊の森町で40年以上のキャリアを持つお寿司屋さんで、3年ほど前に函館に移転したそうだ。親父さんと2人の息子さんが切り盛りする。

息子さん達も年齢からしてバリバリの職人さんという感じ。お年寄りだけがしんどそうに切り盛りしていたり、若いオーナーが勢いと思い込みだけでやっている店に比べて、バランスが良さそうな安心感がある。

地物へのこだわりが相当強く、ネタの話を聞いていても楽しい。写真のウニも地元産のまったくのナマ。漠然と季節違いかなと思っていたが意表を突く旨さ。

もちろん、ミョウバンを使っていない上等な逸品。ニンマリ。スペシャルミルキースイート攻撃だ。

イカの街・函館だが、この時期はヤリイカ。ゴロ(ワタ)の楽しみこそないものの、さすがに鮮度も良く味の濃い刺身を出してくれた。ポイントは山ワサビ。ホースラディッシュのようなものだが、この店のひと手間に感心。

北海道では、山ワサビを出してくれるとことは多いが、こちらでは、刻みネギとおかかを和えているため、ひと味もふた味も違う。イカの薬味だけでなく、そのまま食べても酒肴として成り立つ。

目の前にあった白子が呼んでいたので、ついつい注文。コッテリミルキー!かなりの上物と見た。

続いて焼きものが登場。大助だ。皿の上がびちゃびちゃ脂だらけになるサーモンとは違って、実にふっくらしっとり、かつ良質の脂のノリが抜群。塩加減も的確。貴重な素材の味が活かされていて素直に美味しい。

次の珍味は、一見何の変哲もないタラコだが、実はこれがすごく印象的だった。ワサビ漬けのタラコ。ワサビの味が強いわけではなく、うっすらとワサビ醤油に漬けたのだろうか、実に風味豊か。これだけでいくらでも酒が呑めそうな味だった。

目の前のネタケースに鮮度の良さそうな毛ガニのほぐし身があったので注文する。ミソと身があらかじめ混ぜ合わされている。酒飲みとしてはただ見ているわけにはいかない。

出された時には、毛ガニだけでなく、ズワイも同席していた。茹でスワイに切り込みを入れて、そこにズワイのミソをサンドイッチしている。こういうひと手間に私は弱い。毛ガニとズワイ、ミソ和えの競演だ。幸せ。


握りも間違いのない美味しさ。シャリの感じも悪くない。総合的にかなりの水準にあることは確かだ。ネタも豊富でまず間違いなく“イメージしていた食べたかったもの”にありつくことが出来そうだ。





写真は、順番に本マグロの赤身、軽く炙ったキンキ、ボタンエビ、アナゴ。穴子も地物だそうだが、ふっくらとろけるように調理されていて、意外な美味しさに感激する。

生モノの鮮度だけでそれ以外は知らんぷりという店が北海道のお寿司屋さんには相変わらず多い。その点、「梅乃寿司」は、そういう店と比べては申し訳ないほど、キッチリ真面目に誠実に仕事をしている感じがすごく印象的だった。

お値段は函館的には高い部類に入るのだろうが、内容を考えればまったく問題ない価格だと思う。私は迷わず再訪すると思う。

またまた函館に行く楽しみが増えた。単純に嬉しい。

4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

はじめまして。
グルメさんのブログなので
写真を見る度につばごっくんですし
こんな料理もあるんやなぁと拝見。
でも、ちょっと疑問に思ったことを。

ブログから受ける印象は素敵な中年紳士。
その方が料理はおろか寿司一貫
出てくる度に写真を撮る行為は
ちと恥ずかしく無いのですか?

富豪記者 さんのコメント...

コメント有難うございます!撮影の件、まったくご指摘の通り、恥ずべき行為ですね。。

以前は、食べ物の画像をとっている人を軽蔑していたのに今では、それを実行しています。。正直、慣れもありますが、お店の人との相性というか空気、そのときのほかのお客さんの入りによって、そっと撮らせて貰ったり、一応考えながら撮ってはいます。

まあ粋な姿ではないですね。。ブログを見ていただいている人が増えるにつれ、つい頑張って撮影してしまうこともあります。

本業の新人記者時代に「撮影とは図々しさなり」と教わった変な経験と、趣味の水中撮影で鍛えた臆病な魚をこそっと撮影するという悪趣味がまざってアチコチで醜態をさらしています。。。

Unknown さんのコメント...

富豪記者様

初めまして。けんけんと申します。
今週末、函館にイカを食べに行くので、いろいろ調べていたら、富豪様のブログにヒットしました。

私も富豪様同様、アルコールメインでつまむというパターンです。食べたいものがあれば、世界中どこにでも行く、大バカ者です。
先月も函館に1泊でシーフードを食べに行ったのですが、その際に初めて梅乃寿司さんにお伺いしました。
確かにお書きになっているように、コストとクオリティのバランスはいいかと思いますが、東京在住の自分としてはやはり少し高いようにも感じました。ただ、これは捉え方かもしれませんね。

富豪様は同じ函館市の五稜郭近くにある「寿司 かわむら」には行ったことがありますか? 私は何度もお伺いしているところなのですが、もしまだ行ってないのであれば、是非一度行ってみてください。富豪様のコメントを是非聞いてみたいので、敢えてここではコメントは控えさせていただきます。

プロフィール さんのコメント...

先程、頂いてきました。お店が森町にある頃からお世話になっております。お店に入るとご主人の「いらっしゃーい!」から始まり、お二人の息子さんと話しながら食べることで癒される唯一のお店だと感じております。お弟子さん、スタッフの方々にも感謝しております。今後ともよろしくお願い致します。ご馳走さまでした。