2009年2月12日木曜日

磯部温泉 曖昧な気分

とある週末、仏教徒の夫とキリスト教信者の妻の会話。


妻「日曜に子どもを連れて教会に行ってきたい」

私「(神様に懺悔することも多いだろうから)ぜひ行ってきたら」

妻「ついでに実家に泊まってきてもいいか」

私「(一人になれるチャンス到来だ。ウシシ)たまにはそうしたらいいよ」

妻「一人で留守番だと困らないか」

私「(一人のほうが気が楽だが、一応寂しがっておこう)せっかくの週末だけど、教会や実家に顔出すことも大事だよ。遠慮せずに行ったほうがいい」

妻「食事とか作り置きして行ったほうがいいか」

私「(レンジでチンなんて面倒だ)気にしないで。ひとりでふらっと出かけてくるよ」

妻「どこか行くアテがあるのか?」

夫「(いろいろ詮索しなさんな)まあ温泉とか・・」

妻「なんだって。温泉に行くのか?」

私「(余計なことを口走ってしまった・・)一人なら当日予約でも空いてるところはあるだろうし・・」

妻「温泉に行けるなら教会や実家は今度にしようかな」

私「(マジかよ。そんな程度の信仰心と里心でいいのかよ)家族で行けるような宿は急には取れないと思うよ(この不景気にそんなことはないが)」

妻「温泉行きたかったのよ。たいそうな所じゃなくてもいいから、それなら空いてる宿もあるでしょ?」

私「(神様助けてくれ!)でも教会に行かないとマズいんじゃないの。誰かと約束してたんだろ?(このバチあたりが!)」

妻「そうなんだけど、適当に理由を考えてキャンセルする。実家もいつでも行けるし」



夫、すなわち私の余計なひとこと、すなわち「温泉」というフレーズが、ひょんな展開を招いた。

インターネットで当日空きのある適当な宿を探した。家から2時間程度で行けること、夕食は部屋食又は個室で食べられること、ゆったりした露天風呂、そしてサウナが付いていることが条件だ。

群馬・磯部温泉の「磯部ガーデン」という宿が見つかった。次の間付きでゆったり、風呂もいくつもあるらしい。団体観光客向けのようにも見えたが、なんとなく決定する。

冒頭の会話は朝食時のもの。昼過ぎに家を出て関越を飛ばして午後3時には宿に着いた。

この日の朝、私の頭をよぎっていたのは、ひとりしっぽり海を眺められる眺望の良い高級旅館に電車で出かけるイメージだった。

海を眺めながら露天風呂に浸かり、豪勢な魚介類に舌鼓を打ち、誰にも邪魔されずに読みたい本に没頭する。そんなイメージだった・・・。

ところが現実は、子どもを引き連れ、クルマを2時間も運転して、眺めのない露天風呂に浸かって、どうでもいい料理を食べ、おまけに夕食後は舌切り雀の人形劇を鑑賞した。

まあ文句いっぱいのように書いてはいるが、そこは旅行好きの私だ。行ってしまえばそれなりに楽しい。宿だって、当日予約の割にはマトモだし、値段から考えれば合格点だろう。勝手に思い描いていた「高級旅館のんびり一人旅」とのギャップに少々思うところがあっただけだ。旅行と名が付けばなんでもポジティブに捉えるのが私のエラいところだ。

だいたい、頻繁に一人旅を実行しているため、家族としては毎度毎度そうはさせないぞという怨念のような気持ちがあるらしい。

四の五の言いたい気分をこらえて、ひとりサウナに死ぬほど入って、突発的家族旅行を楽しもうと心を静めた。とはいえ、大声でワイ談に精を出す団体オヤジで混雑するサウナの状況にイラつく。

何となく浮かない気分でいたら大事件。邪気は邪気を呼ぶようで脱衣所から私のスウェットパンツが盗まれていた。

ポケットに入れてあったタバコが狙われたのか、単なるイヤガラセか、まったくナゾだ。上に着ていた寝間着兼用のトレーナーは残っているから尚更気持ちが悪い。

運が良かったのは、普段温泉宿に行く際に持参するお気に入りの作務衣ではなく、スウェットだったこと。

作務衣で上下どちらかを盗られたら泣くに泣けない。それ以外にもポケットに入れていた携帯を直前に部屋に置いてきたことも不幸中の幸いだった。

スウェットとはいえ、そこらへんの安物なんかではない。海外で頑張って購入した舶来モノである。

簡単には買えないから悔しい。すごく腹が立つ(韓国ソウルで700円で買った品物だが…)。

盗っ人への抗議の意味を込めて下半身丸出しで旅館内を歩き回ろうかとも思ったが、結局、フロントに電話して浴衣を脱衣所に持ってきてもらった。

下半身をさらけだして旅館の中を歩くほどいろんな意味で自信はない。

でもあんなものが盗まれるなんて、いったい、何のバチが当たったのだろう。

一人コッソリ内緒で高級旅館に行こうとしていた私のさもしい気持ちに対してであろうか?それとも、教会への不信心を私のせいとみなした神様からのメッセージだろうか?

いずれにせよ中途半端な気分だった。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

はじめまして。
以前から貴殿のブログを閲覧させて頂いております。
ほぼ同年代の者です。

本日の お話、
ひとこと 「わかるなあ」です。

若い頃は孤独に苦しんだことも多々ありましたが、家庭を持ち仕事も落ち着いて来たこの頃 ひとりの時間を作るのは難題ですね。
共感しながらもニヤリと笑ってしまいました。

富豪記者 さんのコメント...

コメント有難うございます。
「一人の時間を作るのが難題」・・。
まさしくその通りですね。
私の場合、割と一人の時間を作っているほうなのですが、それでもひとりになりたい欲求に身もだえする日々です。
でも身もだえするぐらいだから、
ひとりになれたときの喜びも倍増です。
孤独に苦しむ日々だったら、こんな苦悩も贅沢なのでしょう。。
今月中にまた一人旅計画を実行する予定です。