2008年11月28日金曜日

政策秘書


10年以上の付き合いのある某国会議員秘書と久しぶりに会った。同年代で何かと話が合う。いつも色々と面白い裏話を聞かせてくれる。

「○×議員はカツラだ」とか「○△議員の愛人は誰それだ」とか、どうでもいい話題も多いが、仕事に役立つ情報もたまには得られる。昨年から職場が変わり、現在は某女性代議士の事務所に所属している。

政策秘書の資格を持つ彼は、雇用主は、あくまで衆議院。特別職の国家公務員という位置付けだ。所属する代議士が親分であっても、あくまで院から給料が支払われる。とはいえ、親分が落選したら、親分もろとも失業する不思議なスタイルだ。

国会議員の秘書は3人まで国が給料などの面倒を見る。公設秘書と呼ばれる3人だ。公設第一と第二、そして政策秘書だ。

もう10年以上前になるだろうか、政策秘書制度は、高等な国家資格という触れ込みで鳴り物入りで導入された。実際、国家試験は難関。合格率も確かヒトけたパーセントだと思う。

でも、国会に行くと政策秘書はゴロゴロいる。疲れたオジサンの多くが政策秘書だ。実質的に公設秘書経験が5年以上あれば、政策秘書になれるルートがあるため、中堅、古参の秘書稼業経験者は、多くが政策秘書資格を持つ。

聞くところによると難関の試験を突破して政策秘書として働いている人は政策秘書全体の1割程度らしい。

その昔、マスコミ報道のミスリードで、政策秘書は年収1500万円ぐらいを国が保証しているという説が根付いている。実際には、公務員同様、年齢や等級によって年収はマチマチ。言われるほど高収入ではない。

法律の趣旨に照らせば、政策秘書の仕事は、「議員の政策立案や立法活動の補助」なのだが、実際には普通の議員秘書と変わらないケースが多い。パーティー券を売ったり、代理で冠婚葬祭に出たり。

まあ結局は、体よくコストを国庫負担する秘書が昔より1名多くなっただけという側面がある。官僚主導型から議員主導型の政府を目指すという高邁な趣旨で導入されたものの、結局は、制度誕生以前と何も変わる気配はない。

国が編み出す新しい制度の多くが、掛け声倒れに終わってしまうことの一例だろう。問題は、一度生まれた制度は、実効性が乏しくてもそのまま維持され続けるという点だ。

民間企業なら、実効性なき制度は、検証後に廃止したり縮小するのが普通だ。国の政策はこの点が致命的にダメ、検証して改善する発想が全然ない。だから赤字は雪だるま式に膨らむ。「小さな政府」など夢のまた夢だと思う。

まあ、愚痴ばっかり書いていても仕方ない。

この日、衆議院の解散話ついでに、秘書氏からちょっと面白いエピソードを聞いた。まあ政治関係に興味のない人にはどうでもいい話だが、「役人」らしさを感じる妙な話だ。

衆議院が解散されると、その瞬間、代議士センセイ達はフツーの人になる。解散詔書が読み上げられた本会議が終わると、衛視たちに変化が生じるそうだ。

衛視とは、院内の警備を担当する制服姿の公務員。院内警察みたいな存在。彼らにとって、代議士は敬礼の対象。院内ですれ違う際にも当然、金バッジへの敬礼は欠かさない。

ところが、解散の日、本会議場から出てきた議員に対して、敬礼は行われない。代議士の身分を失った一般人に敬礼はしないという伝統なんだそうだ。

このシビアな対応は、天下の衆議院議長に対しても同様だというから面白い。日本の役人らしい杓子定規な対応だが、一方で、なんとなく洒落た伝統のようにも思える。

こういう雑学というか、こぼれ話が好きな私には秘書氏と無駄話している時間は結構楽しい。

ただ、話のついでに、行きもしないパーティー券を買わされたことはちっとも楽しくない・・。

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