2008年9月30日火曜日

二世、三世議員のこと

たった4日で大臣が交代した麻生内閣。もともと二世、三世議員だらけの布陣だったのだが、国交相の後任にも二世議員を充当した。

これで18人の大臣のうち、11人が二世、三世議員で占めるなんとも特殊な内閣になった。

引退する小泉元首相も、後継に次男を指名し、政治の世界では、まさに世襲でなければ立候補もおぼつかない状況になってきた。

お決まりの世襲批判は今後も強まりそうだが、私は世襲議員をことさら問題視する気はない。全然問題がないとは言わないが、変なタレント議員とかのほうがよっぽどタチが悪いと思っている。

チンピラタレントよりも政治の世界を学んできただろうし、幼い頃から国政を担う意識を持ち続けていたのなら、それに役立つ勉強もしたのだろうから、選挙の洗礼を受ける以上、世襲議員自体は闇雲に否定しても仕方ない。

問題は、世襲議員が受け継ぐ「地盤」は「経済的利益」であるという点だ。

俗に選挙には「地盤」、「看板」、「カバン」の三バンが不可欠と言われる。

看板は、当人の肩書き、カバンは選挙資金を指す。もっとも重視される地盤は、同じ苗字を持つ似たような顔をした子どもが登場することで、右から左に受け継がれる。

小泉元首相の次男を例にとれば、彼はつい先日出馬表明をしたばかり。とはいえ、対立候補が、たとえ5年、10年前から準備をしていても次の選挙では圧勝する。落選するわけがない。

父親にどことなく似た風貌、地盤は盤石。多分選挙期間中ずっと寝ていても勝つと思う。

この「地盤」が持つ経済的利益って物凄いことだ。

今後はともかく、これまで安定与党の大物議員の二世は、地盤を継いで、普通に選挙に出続けるうちに10年ちょっとで当選回数もいっぱしになって、順番通りに大臣の椅子を手に入れる。

ことさら変な行動でもしないで健康でいる限り、このレールはほぼ間違いないのだから、やはり特殊な世界だ。

そう考えると、親から受け継いだ地盤は、まさに「経済的利益」であることは間違いない。

経済的利益という言葉をやたらと連発したが、この言葉、税の世界では非常に大きな意味を持つ。「税金をかけるべき対象」そのものを指す言葉だ。

地盤を引き継いだ世襲議員には、常識で考えて経済的利益が生じているわけだから、その部分に課税すべきという発想は決して馬鹿げたものだとは思わない。

もちろん、各論となると難しいのは確か。小泉家のように譲る側の親が元気バリバリのケースもあるし、小渕家のように先代の急逝で弔い出馬というパターンもある。

先代の死亡に伴う地盤引き継ぎに関しては、まさに相続税の課税対象にするのがうってつけだが、先代が健在だったら贈与税にすべきなのだろうか?

課税標準をどう見るか、評価をどう見るか、もちろん、税務の技術的な面で厄介ではある。

素人考えをすれば定額制なんていうのもアリだろう。先代の当選回数や要職歴などに応じて累進制を持たせた定額制が分かりやすいかも知れない。

まあ、法律を最終的に決めるのは、いうまでもなく国会。その構成員たる二世議員サマが“議員世襲課税”に同意するはずはないので、こんな話は妄想にしかならないが、やはり、無税で経済的利益を手にする現状は腑に落ちない。

企業経営の世襲は、中小企業では珍しくないが、そこには相続税という洗礼が待っている。

個人的な体験だが、先代の相続を経験した際に感じたのは、「会社の経営権は、お国から買わされた」という感覚。

流通性のない自社株の相続で、大層な税金を納めた。高額な税金を納めたのに自分自身の貯金が増えたわけでなく、むしろヤリクリに苦労した。

仕事や生活は変わらず、変わったのは会社の株主名簿の持株数だけ。

だから、まるで会社を国から払い下げてもらったかのような感覚があった。

近年、事業承継支援税制の必要性が叫ばれ、ひところよりは事業を継ぐ跡取りへの課税方法に、それなりに配慮が行われるようになってきた。

ひょっとすると、この流れ、自分達の無税特権がおもはゆい世襲議員連中が、企業世襲の苦しい現実に同情して打ち出している路線だったりして・・・。

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